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全国エリマネでは【エリマネ3.0】を提起します

 

全国エリアマネジメントネットワークでは、幹事会を中心にこれまでのエリアマネジメントの実践を俯瞰して振り返り、これまでエリアマネジメントがどのようなことを行ってきたのか、どのような意味を持っていたのかを整理すると共に、特にコロナ禍以降の近年の社会的な情勢等も踏まえたこれからのエリアマネジメントの意味、役割を議論してきました。
2025年9月に開催した第10回総会の際のシンポジウムではその議論の一端を紹介しました。その後、幹事会でも議論を重ね、この度【エリアマネジメント3.0 〜共創とリーダーシップによるまちの再創造〜】と題する文書を取りまとめました。

この文書は、エリアマネジメントのこれからの方向性を全国エリマネとして示すと共に、会員や会員外とのエリアマネジメントに関する対話の土台になるものと考えています。
是非、会員の皆さまにおかれましては、この文書をお読み頂き、組織内での意見交換をお願いしたいと思いますし、ご意見も頂戴できればと思います。

また、この【エリマネ3.0】を具体化していくためには、エリマネ組織のみならず、国や自治体等の行政、地域の事業者、住民等多様な方々との対話を重ねていくことが重要になると考えております。そういった対話の機会を是非、各地域でも行って頂くと共に、全国エリマネとしても今後対話の機会、シンポジウム等を検討しております。

今後の動きについても是非ご関心をお寄せください。

 

2026年1月16日
全国エリアマネジメントネットワーク

 

▼文書(PDF)は下記よりダウンロードください。▼

☛ ダウンロード 『エリアマネジメント3.0 〜共創とリーダーシップによるまちの再創造〜』

 

『エリアマネジメント3.0 〜共創とリーダーシップによるまちの再創造〜』

 

 

沢山の皆様のご尽力のもと、2025年6月28日 会場発表及びオンライン配信にて「エリアマネジメント研究交流会 第5回」を実施致しました。

第5回は調査報告5件、研究報告4件、事例報告6件の、全15件の発表エントリーがありました。
▷当日のプログラムはこちら

会場はとてもアットホームな雰囲気ではあるものの、各発表に対して実行委員及び選考メンバーもからもたくさんの質問や意見が多数飛び交い、時間が足りないほど充実した情報意見交換・議論ができたと感じております。


恒例となりました各セッションでの全体統括では、発表テーマ毎に共通した質問やアドバイスも挙げらる中、全国エリマネ副会長の後藤氏の鶴の一声で「横連携の枠組み」も構築されるなど、本研究交流会ならではの着地に、会場では笑いも起こっていました。
こちらの展開も楽しみです。「横連携」の方々の来年の報告をお待ちしています!

 

【アワード受賞者】

第5回のアワードは以下の方々が受賞されました。 ※「◎」は発表者

【調査研究部門】
◇オーストラリア ニューサウスウェールズ州におけるBID組織の変遷とCIDパイロットプロジェクトについて
  ◎北野 達也 (岡山大学工学部工学科環境・社会基盤系都市環境創成コース)
    前田  雛 (岡山大学 大学院 環境生命自然科学研究科・院生)
    堀  裕典 (岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域 准教授)

【研究報告部門】
◇大阪版シェアドストリートモデル「歩行者と車両が共存し、滞留空間として車道を利活用する道路」実装化の成立要件・可能性に関する研究報告
  ◎米田 佳代 (合同会社blueflair /(一社)船場倶楽部 船場まちづくり検討会)
    三好 正人 (大阪ガス株式会社/(一社)船場倶楽部 船場まちづくり検討会)
    清水 勝民 (総合調査設計株式会社)
    橋爪 紳也 (大阪公立大学 特別教授)
    山口 敬太 (京都大学大学院 地球環境学堂 准教授)
    吉野 和泰 (鳥取大学 助教)
    中上 貴裕 (大阪市 建設局 企画部 企画課 道路空間再編担当)

◇「実験的BID制度」の特徴及び成果 −シンガポールの「Pilot BID Programme」の分析−
  ◎深津  壮 (日本大学大学院理工学研究科博士前期課程建築学専攻・院生)
    小野寺 瑞穂 (株式会社国際開発コンサルタンツ・修士(工学))
    泉山 塁威 (日本大学理工学部建築学科 准教授・博士(工学))

【事例報告部門】
◇再開発事業のエリアマネジメントの実践と、エリアイノベーションへの展開
  ◎鎌倉 大輔 (野村不動産株式会社 ATF エリアイノベーションタスクフォース)
  ◎藤原 由佳梨(野村不動産株式会社 ATF エリアイノベーションタスクフォース)
    安藤  響 (野村不動産株式会社 ATF エリアイノベーションタスクフォース)
    草間 孝太 (野村不動産株式会社 ATF エリアイノベーションタスクフォース)
    中島 滉平 (野村不動産株式会社 ATF エリアイノベーションタスクフォース)

【ベストプレゼンテーション部門】
◇公共空間における可動イスの設置と運用によるエリアブランディングに関する研究
  ◎岡田  潤 (東京大学大学院新領域創成科学研究科)
    山下 裕子 (全国まちなか広場研究会)

◇東京・勝どきから他エリアに広がる、稼げる、持続するエリアマネジメント
  ◎吉澤 晶子 (PIAZZA株式会社)

 

第5回 アワード受賞者の皆様 写真

 

本研究交流会恒例となりました“舗装材トロフィーシリーズ”
第5回目のトロフィーは、札幌市北3条広場 (通称:アカプラ)で使用されている煉瓦のトロフィーです。北海道江別市野幌地区『米澤煉瓦』さんにご協力頂きました。
受賞者の方々には、御名前とタイトルを記載し、制作後に各受賞者に贈呈されます。受賞者の皆様は楽しみにお待ちください。

 

今回も、トータル7時間超えという長丁場ではありましたが、多岐にわたる視点での発表を伺うことができ、大変有意義な会となりました。
海外制度の研究や各地の特徴的な取り組み、古い地域活動の再評価、新しい実践など、多様なアプローチが共存している点に日本のエリマネ環境の豊かさを改めて感じました。
特に、今回は企業の方からの実践報告が複数ありました。長年の取り組みを一つの成果として報告いただこと、そしてデベロッパー視点での仕様や収益性を意識した継続的な実践をお話頂き、エリアマネジメントに関する研究や実践報告の内容の多様性も広がってきたと実感しました。

嘉名実行委員長からの総括です。
「建設費の高騰や人口減少、地方都市の衰退といった課題が進む中で、従来の開発型から価値向上を目指すエリアマネジメントへの転換が求められている。そうした時代において、現場の課題を共有し対話を深める研究交流会の重要性は一層高まっていると感じる。
5年間の取り組みを振り返ると反省点もある一方で、発展し順調に進んできた面もある。今後も引き続き皆様のご支援賜りながら、研究交流会を盛り上げていきたい。」

 

本研究会に様々な点から関わってくださる皆様と共に、更に盛り上がっていければ嬉しく思います。
引き続き、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

最後に、参加者の皆様、付き合いいただきました視聴者の皆様、ありがとうございました。

 

▲第5回選考委員▲

○実行委員長:嘉名 光市(大阪公立大学院 教授)
○各セッション担当委員
【調査研究部門】司会:村山 顕人(東京大学 教授)
【研究報告部門】司会:野原  卓(横浜国立大学 准教授)
【事例報告部門】司会:要藤 正任(京都産業大学 教授)
【実行委員メンバー】
泉山 塁威(日本大学 准教授)、宋  俊煥(山口大学 教授)、
高木 悠里(大阪公立大学 講師)、丹羽 由佳理(東京都市大学 准教授)、
堀  裕典(岡山大学 准教授)、御手洗 潤(東北大学 教授)、
籔谷 祐介(富山大学 講師)、
【選考メンバー】
後藤 太一(リージョンワークス合同会社 代表社員/全国エリアマネジメントネットワーク副会長)
金城 敦彦(一社)大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会)、
大原 大原 大志(一社)大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会/全国エリアマネジメントネットワーク幹事)
○全体司会・運営:全国エリアマネジメントネットワーク事務局
【事務局】
長谷川 隆三(全国エリアマネジメントネットワーク)、
関口 泰子(全国エリアマネジメントネットワーク)、
三牧 浩也(UDCネットワーク)
【運営サポート】
東京都市大学環境学部 丹羽研究室の皆さん

会の実施・運営にご尽力いただきました皆様、ありがとうございます。

オンラインにてご視聴いただけます!

6/28に開催する「エリアマネジメント研究交流会 第5回」をオンラインにてご視聴いただけます。
エリアマネジメントに関する研究者や実践者の方々の発表を、是非ご覧ください。

【エリアマネジメント研究交流会 第5回 オンライン視聴】
開催日時:2025年6月28日(土)10:30 - 18:15(終了予定)
開催場所:zoomウェビナー
参 加 費:無料、zoom事前登録制
▼下記リンクから事前登録をお願いします▼
▷ウェビナー事前登録サイト「エリアマネジメント研究交流会 第5回」視聴
※ご登録後、ウェビナー参加に関する確認メールが届きます。

当日のウェビナーでは、Q&A機能にて発表への質問も受け付けます。
たくさんのご質問お待ちしております。

▼当日のプログラム▼
☞ダウンロード 【プログラム】エリアマネジメント研究交流会第5回

今年も”エリアマネジメント研究交流会”開催します!

エリアマネジメント研究交流会の第5回を今年度も開催致します。
「エリアマネジメント研究交流会」は、全国エリアマネジメントネットワーク、UDCネットワークの2者による実行委員会で運営しており、エリアマネジメント研究の深化、すそ野の拡大、研究者と実務者の意見交換・交流の場の提供を目的としています。
本研究交流会では、エリアマネジメントに関する調査、研究や実践について広く発表者を募り、研究者同士、研究者と実務者での議論を通じて、エリアマネジメントの役割や価値・評価、実践知等についての知見を深め、共有していきたいと考えております。

今年は6月28日開催です。

第5回として2025年6月28日(土)に開催することと致しました。5月より発表者の募集を行いますので奮ってご参加ください。本研究交流会は、出来るだけ多くの発表が行われるよう厳格な審査等は行いません。また、一定の結論や独創性、先駆性を求めるものでもありません。着手したばかりの調査、研究でも広く受け付けますので、よろしくお願いいたします。
※開催方式につきましては、「発表者及び実行委員会のみ会場参加、その状況をオンライン配信」を想定しております。

▼研究会に関する詳細及び研究交流会へのエントリーについては、下記資料をダウンロードください。▼
☛ ダウンロード 【ご案内】エリアマネジメント研究交流会第5回について
☛ ダウンロード 【ES】エリアマネジメント研究交流会第5回_エントリーシート

発表は「東京」にて開催します。※会場の詳細は参加者のみにお伝えいたします。

研究交流会 第4回について

昨年6月29日に第4回を開催した研究交流会では15件の発表がありました。第4回のアワード受賞者については以下のページをご確認ください。
第4回の梗概集も後日、本ホームページにアップします。お楽しみに。

開催後記 エリアマネジメント研究交流会 第4回

 

エリアマネジメント研究交流会について

研究交流会にエントリーされる方は、下記をご確認ください。

2024年8月30日、エリアマネジメントシンポジウム2024を虎ノ門ヒルズステーションタワーにて開催しました。今回のテーマは「エリアマネジメントの意味を考える」。エリアマネジメントと呼ばれる活動や事業が生まれて20年が経過した今、改めてエリマネを見つめ直す議論を二部構成にて行いました。
多様な立場や地域でエリマネに取り組む方々に登壇いただき、課題や悩みを共有しながら「これからのエリアマネジメント」のヒントに溢れた【開催レポート_その3】です。

▷▷▷【開催レポート 全国エリアマネジメントシンポジウム2024_その1】はこちら。

▷▷▷【開催レポート 全国エリアマネジメントシンポジウム2024_その2】はこちら。

 

SESSION2:エリアマネジメントに係わる私たち 
                    〜エリアマネジメントに携わる若手メンバーと中堅メンバーの対話によって〜

続いてのセッションでは、エリマネに携わる若手メンバーと中堅メンバーの対話によってエリマネそして、それに係わる人々について考えていきました。全国エリアマネジメントネットワークの若手実務者会議「AMU35」のメンバーから、日々の取り組みの中で感じる課題や悩みを投げかけ、中堅メンバーがメンターとしてそれに答える形で対話をしていきます。

<登壇者>

【メンター】
内川亜紀氏|札幌駅前通まちづくり株式会社 代表取締役
園田聡氏|有限会社ハートビートプラン 代表取締役(共同)

【AMU35メンバー】
金井れもん氏|(公財)中国地域創造研究センター/広島駅周辺地区まちづくり協議会
川島あさひ氏|東京建物株式会社
高山円香氏|三菱地所株式会社/大丸有エリアマネジメント協会
浅野進氏|安田不動産株式会社

【モデレーター(AMU35発起人)】
山中佑太氏|NTTアーバンソリューションズ株式会社
内野洋介氏|(一社)二子玉川エリアマネジメンツ/東急株式会社

 

AMU35メンバー
(左上:川島あさひ氏 / 右上:浅野進氏 / 左下:金井れもん氏 / 右下:高山円香氏)

 

Q.現場対応や関係者調整など目の前の業務に追われ、エリマネの上流にあるビジョンと現場の取り組みとの距離を感じながらも、丁寧に振り返る時間がありません。また、アウトプットの機会が少なく、若手の頃はどういった行動をして視野を広げればよいでしょうか?

内川 若手ではなくなった今でも目の前の業務に追われていますが、私の場合は少し割り切っていて、イベントなどの現場業務は一番自分たちが考えていることを表現する場だと捉えています。イベントは「手段」なので、手段とビジョンがなるべく近づくように心がけていますね。振り返りも、資料をまとめて関係者を集めてしっかり時間を取ろうとすると大変ですが、実は雑談の中で振り返っていることが結構多いので、そういったことでも大切にするようにしています。
若手の頃の情報収集については、全国エリマネの事務局の方と仲良くなって、とにかくなんでも話を聞いてました(笑) 私の頃はエリマネ女子会という活動があったので、そこで他のエリマネ団体の先輩方と仲良くしていただいて、皆さんの話の中から課題の糸口を見つけるようにしていましたね。今でも様々なプログラムがあるのでそういった場に参加するといいかもしれません。

メンターの内川亜紀氏

 

園田 私はコンサルの立場なので、ビジョンと実際の取り組みがいかに結びついているかを言語化することが大きな役割ですが、若い頃は言語化しようにもスキルも経験も乏しかったので、現場にいる方の話をたくさん聞いて、その想いを自分なりに言語化するようにしていました。中でも一番よく聞きに行っていたのは飲食店の方の話。飲食店は、地域の経営者の中でも非常に高いリスクを背負っていて、自分の業態や出店理由にしっかりロジックを持ってらっしゃるので、街の声として非常に学ぶことが多いんです。
そういう方々がどういうビジョンやポリシーを持っているのか、自分たちが実施したイベントは何か寄与できていたのか、別の席で食べているお客さんが関心を持ってもらえる内容になってたかなんかを考えて。正しいかどうかはわかりませんし、お店のことは自分で調べてこいと怒られることもありましたが(笑) でも自分たちの視野も広くなりますし、すごくしっくりくるお話が多かったと思いますね。

 

Q.エリマネの取り組みはKPI設定や効果測定が難しく、どういった指標で測るべきか悩んでいます。また、エリマネの一環として行っている清掃活動には多くの方が参加してくださる一方で、そこからの展開に繋げられない状態が続いています。ステークホルダーが非常に多い中で、新しい取り組みに巻き込んでいくにはどうしたらよいでしょうか。

園田 コンサルの立場で言うと、自分が好きで素敵だと思うことに取り組めばいいと思います。コンサルという存在は当事者の方からすると、お金もらってあるべき論を言っているだけと思われがちで、なかなか話を聞いてもらえないんです。なので、地域のこの人が言っていること、考えていることの中で、自分が心から素晴らしいと思えるものに対して、どうやったら実現できるか考えるようにしています。
地域には多くの企業がいるので一社一社すべてが合意して、全員がメリットが感じられることをやるというのはそもそも無理があるんです。それだったら、明確にやりたいことがある一社に絞って、今回はこの企業のテーマで皆さんでできることをやってみませんかと動くようにしています。この時に、お金を募るだけではなく、それぞれが持っている本業のリソースを共有してほしいとお話しすることも大事です。デザイン系の会社だったら制作物を協力してもらえないかとか、学校があれば学生に関わってもらうことができないかとか。一社ではできないことも、地域全体で力を合わせることでこんなことまでできるんだとわかってもらえれば、次に繋がっていくんですよね。
各社がどういったことにメリットを感じているかは、僕らではわからないことがたくさんあるので、話を聞いて何を求められているのかちゃんと理解して蓄積していくと、新しい活動に活かせるようになると思います。

メンターの園田聡氏

 

内川 清掃活動は参加してくれるだけで嬉しいと思った方がきっといいですよね。仲間がこれだけいるんだとお互いに知ることができますし、顔がわかるだけでも何かに繋がるんじゃないかと考えています。
KPIは誰もが難しいと感じていることかもしれませんが、私たちの場合は常にビジョンやミッションと照らし合わせて活動がちゃんとそれに伴っているかを確認しています。

園田 KPIや効果については、一つの取り組みを見た時に、どう多面的な価値を見出せるかといった見方をすることが大事だと思いますね。
例えば、ある街の駅前に中高生が多く集まる広場をつくった際に、周辺のステークホルダーの方にこの場所にどういった価値を感じるかヒアリングしたんです。その中で20代向けのショッピングセンターのテナントさんが、「広場に集まる中高生は、今はうちで買い物はしないけれど、3〜4年すればメインターゲット層になるので、この場所に親しみを持ってくれれば今後お客さんになってくれるかもしれない」という話をされて、そういう考え方もあるのかと思ったんです。つまり、店舗の経営判断として直近の顧客獲得に繋がらないことには投資できないけれど、公共なら将来的な人の流れを想像して投資できる。街で過ごす習慣をエリマネ側でつくっていくことは、ある種数年後に対する顧客創造の投資にも繋がるので、新しいマーケットをつくるという説明もできるんです。そうやって、絶対的な正解というよりあらゆる見方で価値を見つけていくことが大事だと思いますね。

内川 ヒアリングに行くと、事務局の言ってることって難しくてわかんないのよと言われることが結構ありますよね。やっぱり人それぞれの理解の度合いは異なるので、自分たちがやりたいこともあるけれど、相手の目線で話を聞くということはずっと大切にしていることかもしれません。

 

Q.エリマネは板挟みになる苦しみや収益性の悩みなど、逆風も多く負けそうになる時もあり、日々のモチベーションに波が生じます。そういった時はどうしていますか?

園田 僕の場合は最初の質問にもあった、その街の飲食店に話を聞きに行きますね。エリマネはステークホルダーが多く、それぞれのメリットになっているのか収益性があるのかといった話によくなるんですけど、「誰のメリットにもなってないことをやってる」と思ってしまうと、そもそも仕事として意味があるのかというところまで考えてしまいます。そういった時に、自分たちの活動を最初に手を挙げて一緒にやってくれた人を思い出して会いに行くんです。自分たちがやってることをわかってくれている存在は安心しますし、街の人の顔を見ることで、誰のためにやっているのかを再確認していますね。

エリマネの取り組みはそれぞれの地域で異なりますが、志を同じくする立場の悩みは共通するもの。現場に立つ実務者同士、具体的なアドバイスは若手メンバーにとっても多くのヒントとなったようです。
対話の後には、メンターのお二人から若手メンバーに向けてコメントをいただきました。

「今エリマネに取り組まれてる方の中でも、『エリマネ』という言葉をあまり知らずに、会社に配属されて関わるようになった方は多いと思います。ですが、私も全く知らないところからここまでやって来ているので、すごく専門性が必要なのかというとそれだけではありません。皆さん立場も違いますし、やっていることも全員バラバラなので、違いを楽しみながら業務に携われたらいいんじゃないかなと思っています」(内川氏)

「先輩方の研究や取り組みによって日本なりのロジックや手法が整理され、その功績の上に僕らはエリマネ活動をすることができています。一方で、これからのことは今の現場に一番ヒントや可能性があると思っていて、新しいことに取り組むと今までのロジックでは解けない課題が出てきますが、それが解けた時にまた次のステージに進めると思うんです。そういう意味では、僕らは先輩たちがやってきたことに貢献しながらさらに発展できるよう、今日のように現場で感じていることを共有し、研究し、何か形に定着させていかなければなりません。世代ごとで積み重ねていくことを大事にしながら、自らも新しいフィールドに行けるようにどんどん現場で活躍してほしいなと思います」(園田氏)

最後に、本会会長である出口敦氏から閉会の挨拶がありました。

「今日の一番のキーワードは『悩む』だと思っていまして、各セッションの中でも非常によく出てきた言葉ですが、やはり皆さんで悩む場がこの全国エリアマネジメントネットワークであり、悩みを議論する中から答えを導き出そうとすることがこの組織の一つのあり方だと思っています。時代と共に悩みが尽きることはないと思いますが、今後も活発な活動を通じて、日本のエリマネを広めていきたいと思っています」(出口氏)

全国エリアマネジメントネットワーク会長 出口敦氏

2024年8月30日、エリアマネジメントシンポジウム2024を虎ノ門ヒルズステーションタワーにて開催しました。今回のテーマは「エリアマネジメントの意味を考える」。エリアマネジメントと呼ばれる活動や事業が生まれて20年が経過した今、改めてエリマネを見つめ直す議論を二部構成にて行いました。
多様な立場や地域でエリマネに取り組む方々に登壇いただき、課題や悩みを共有しながら「これからのエリアマネジメント」のヒントに溢れた【開催レポート_その2】です。

▷▷▷【開催レポート 全国エリアマネジメントシンポジウム2024_その1】はこちら。

 

●クロストーク

プレゼンテーションの後は、全国エリアマネジメントネットワーク幹事・森ビル株式会社の中裕樹氏、全国エリアマネジメントネットワーク副会長・リージョンワークス合同会社の後藤太一氏も加わり、3名でクロストークを行いました。

最初に、モデレーターである後藤氏からインプットと投げかけがなされました。

全国エリアマネジメントネットワーク副会長/リージョンワークス合同会社 後藤太一氏

 

「エリマネの役割を見直す前に、エリマネそのものの解像度をもっと上げて議論した方がいいと思っています。というのも、海外ではエリアマネジメントではなく『Urban Place Management』という言葉で表現していて、細かく定義もされているんです。まず、エリアではなく『プレイス』という言葉になっていますが、具体的にいうと『共有された文脈や関係性のある人々が生活する舞台』。つまり、施設や空間だけではなく、人の活動や人と人の関わりを扱っているということが大きな考え方です。もう一つ『マネジメント』というのは、日本のエリマネでは建物がつくられた後にどう使いこなすかという管理・運営を指すことが多いですが、海外の定義では計画、リーダシップの発揮、コミュニケーションとマーケティング、経済開発、制作提案などを包括して行うことをマネジメントの内容としています。
世界ではこういった考え方があり、定義化されている中で、日本のエリマネは現状何をしていて、今後どうあるべきか。そういったところに一歩踏み込んで議論できればと思います」(後藤)

 

「エリアマネジメント」という言葉が誕生して20年。さまざまな研究や取り組みを経て、そのあり方や意味を確立してきました。次第に日本の各地で取り入れられるようになり、エリマネはさらに発展を続けています。そうした現状を改めて会場の皆さんと共有した上で、次に何を考え、取り組むべきなのか、クロストークにより議論を深めていきました。

後藤 飯田さんのプレゼンテーションでは、「第三の自分」や「経験への開放性」など、エリマネの役割としてこれまで求められてきた経済発展以外にももっと大事なものがあるんじゃないかと感じました。

飯田 今世界中でまちづくりに取り組む人は、経済よりも人の幸せに重きを置いているように感じています。もちろん経済開発によって街が活性化することも大事ですが、そこだけを追求すると取り残されてしまうことがあまりに多いのも事実です。経済だけを優先してきた社会からの脱却する取り組みとして、インフォーマル・パブリック・ライフがあるんじゃないかと思います。

後藤 カフェの例もありましたが、インフォーマル・パブリック・ライフ的な場というのはどういったものがあり得るでしょうか。

飯田 お金を持っていなくてもいられることがポイントで、商店街や骨董市なんかはお金を持っていなくてもそこに佇んだり回遊するだけでも許されますよね。 ただいてもいいし、買いたかったら買ってもいいというぐらいの状態が、一番インフォーマル・パブリック・ライフとしてうまくいくと思います。
デザイン的なことで言うと、まず誰でも訪れることができて、カフェで過ごしてもいいし、ベンチに座ってもいいし、芝生で休んでも大丈夫という、そういった自由にいられるしつらえになってることが一番理想です。骨董市に行っても何にも買わないでなんか見てるだけの人もたくさんいるように、そういう緩やかさが大事だと思うんです。

後藤 森ビルさんが手がけるヒルズも、何も買わなくても回遊できるような設計をされていますよね。

  そうですね。居住者の方も多くいらっしゃいますし、日常的に居られるような場を考えています。最近では住宅地でもエリマネの取り組みが始まっていて、飯田さんのご経験のように住宅地にあるさまざまな課題に対して住民同士が協力してエリアの価値を上げていこうとしています。そうした中で、我々の立場として地域の方と協力できる可能性はあるのでしょうか。

全国エリアマネジメントネットワーク幹事/森ビル株式会社 中裕樹氏

 

飯田 ここは自分がいてもいい場所なんだ、と思える場をデザインすることが大事だと思います。東京には新しい施設が次々とできており、広場は美しく、座るところも十分に整えられているけれど、自分が場違いに思えてしまうこともあります。この「場違い」の対極には「歓迎」があって、例えばカルディは非常に成功を収めていますが、それはやはり入口でコーヒーをもらえることが嬉しいからだと思うんです。自分がいても大丈夫なんだ、許される場なんだと感じ取る力を人は敏感に持っていると思うので、その点を意識すると地域の人との関わりもすごく変わるんじゃないかと思いますね。

  ありがとうございます。もう一点、クリエイティブクラスの開放性を上げていくことが、その場の質を高めていくという話がありました。確かにエリマネとしてもその可能性を感じていざやろうと思うと、もっと刺激的なイベントをやろうだとか、アートプロジェクトをやろうといった既視感のある企画に落ち着いてしまいます。おそらくアプローチは多様にあると思いますが、取り組む上でどういったことが重要になるでしょうか。

飯田 まず、「インフォーマル・パブリック・ライフはイベントではない」ということを前提に持っていただきたいと思います。日本は季節の行事を大事にしてきた歴史があるので、それをしなければいけない意識が強くありますが、イタリアやフランスの広場ではそこまでイベントは行われておらず、基本は日常的に佇める場なんです。インフォーマル・パブリック・ライフは日常の中のちょっとした非日常を感じる場となっていて、週に3〜4回行く人もいます。しかし、イベントをやっているとその分座れる場所や滞在できる空間がなくなるので、日常的に訪れている人やイベントと関係がないと感じる人を排除することになりかねません。特に日本の広場はそういう側面が強く、イベントをやっていない時は人は端っこを通り、空白地帯になってがらんとしてしまう。そうではなくて、日常的に人が佇める場をつくることが大切だと思いますね。

後藤 過ごし方が選べる状態にあるといいですよね。例えば自分の場合だと昔は居心地が良かった渋谷のセンター街が最近行きづらくなっているんですけど、それは人の変化もあるわけで。やっぱりいろんなものがある程度あるかどうか、全てを揃える必要はないけれど、この街には何が必要かを考え続けないといけないと思います。

飯田 すべての解決策はイベントではなく、そこでゆったりと時を過ごせる場のセッティングをすることだと考えていくといいのではないかと思いますね。日常の中で気軽に外で過ごせる場所というのは、求められてるのに全然ないんです。設計した後にそうした場をつくることは難しいと思われるかもしれませんが、キッチンカーとビストロチェアを何個か出してみるだけでも雰囲気は非常に変わります。そういったできるところからでも試すのもよいかもしれません。

飯田美樹氏

 

  できることからやる時にも、やはり一社ではできないことが多いので、他社の物件や地域の方と一緒に取り組んで、エリア全体の価値を上げていくという意識が重要ですね。
もう一つ、今日の飯田さんのお話を聞いて強く感じたのは、人に対して高い解像度を持って見ていくことです。エリマネでは「人中心」という考え方は以前から言われていることですが、「人」についてもっと具体的に突き詰めるべきだと改めて感じました。

飯田 街やそこにいる人を観察する際には「関係の解像度」を見るといいかもしれません。関係というのは、何かに触れられるとか、匂いがするとか、お店の奥から店員さんが声をかけてくれるといった関係性が生まれる予感のようなものです。自分がいてもいいんだと思える温かみがあるかないかを見ていくと、今後のエリマネにも何かヒントになると思います。

後藤 都市というものはいろんな人の場所であるということが前提にあって、その中でどのように人の活動や交流を促していくか考えるべきだということですね。
やるべきことは時代とともに非常に変わり続けていますが、今日得たヒントをそれぞれの街に応じてカスタマイズしていっていただきたいと思います。

 

 ▷▷▷【開催レポート 全国エリアマネジメントシンポジウム2024_その3】はこちら。

2024年8月30日、エリアマネジメントシンポジウム2024を虎ノ門ヒルズステーションタワーにて開催しました。今回のテーマは「エリアマネジメントの意味を考える」。エリアマネジメントと呼ばれる活動や事業が生まれて20年が経過した今、改めてエリマネを見つめ直す議論を二部構成にて行いました。
多様な立場や地域でエリマネに取り組む方々に登壇いただき、課題や悩みを共有しながら「これからのエリアマネジメント」のヒントに溢れた内容を3回に分けてレポートします。

 

冒頭に、国土交通省 都市局まちづくり推進課長 須藤明彦氏より開会のご挨拶をいただきました。

国土交通省 都市局まちづくり推進課長 須藤明彦氏

「国土交通省では、官民が持つ空間をパブリックな場所として街に開き、 イノベーションの創出や人々のウェルビーイングを実現するまちづくりに向けた政策を推進しているところです。そのためには、ハードの整備だけではなく、多様な関係者間でのビジョンの共有、連携体制の構築、 官民連携のさらなる強化といったことが重要です。その中で、エリアマネジメントの取り組みはますます欠かすことができないものとなりますので、今後の都市再生政策の要にもなるエリアマネジメントのあり方について、皆さまからのご意見もいただきたく考えております」(須藤氏)

 

SESSION1:インフォーマル・パブリック・ライフから考えるエリアマネジメント

最初のセッションテーマは、「インフォーマル・パブリック・ライフから考えるエリアマネジメント」。『インフォーマル・パブリック・ライフ―人が惹かれる街のルール』の著者である飯田美樹氏をゲストに迎え、都市における居心地良さや暮らしやすさの観点からエリアマネジメントの役割を改めて考えていきました。

初めに、飯田氏から「インフォーマル・パブリック・ライフ」について、事例とともにご紹介いただきました。

Lumière 代表/カフェ文化、パブリック・ライフ研究家 飯田美樹氏

 

まず、このテーマで執筆するに至った背景として、自身の経験が大きく影響していたと話します。
カフェ文化やパブリックライフの研究に取り組む傍ら、子供の出産を機に専業主婦になり、京都のニュータウンに引っ越したという飯田氏。そこは大きな公園やショッピングセンターが周辺にあり、ウォーカブルでよく計画された都市だったそうですが、どこか違和感があったそうです。

「いざ暮らしてみると、街のどこを歩いてもほとんど人がいないことが日常でした。 それでも街に適応して楽しもうと心がけて、児童館やママサークルへ出かけていったものの、日増しに得体の知れない孤独が深まるばかりで、泣くことが増える一方だったんです。
そうした日々の中、ある大学の先生から私の研究に近いんじゃないかとレイ・オルデンバーグが書いた『The Great Good Space(翻訳版:サードプレイス―― コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」)』を読むことを勧められました。当時はまだ知られていなかったサードプレイスやカフェの重要性を説いた本で、そこには私が抱えていた得体の知れない孤独と同じものをアメリカの専業主婦たちが抱えていると書かれていたんです」(飯田氏)

オルデンバーグは「元々人間は家庭と職場・学校を第一と第二の場とし、それから第三の場となるインフォーマル・パブリック・ライフがあることで精神的なバランスを取っていた」とし、それに対してアメリカ社会は、第一と第二の場のみで全てを背負ってしまっているため、ストレスが解消されない状態が起きていると指摘しています。
この「インフォーマル・パブリック・ライフ」との出会いを機に、得体の知れない孤独に対する答えがここにあるのではないかと、自らも研究を進めることを心に決めたと言います。

「この第三の場所となる『インフォーマル・パブリック・ライフ』とは、老若男女が気軽に行けて気分転換ができる場所およびその時間と定義しており、具体的には広場、公園、川岸、海辺、市場、商店街などのイメージです。第三の場所というと、日本では『サードプレイス』をイメージするかもしれませんが、サードプレイスはインフォーマル・パブリック・ライフに含まれる中核的な存在と位置付けています。カフェ、パブ、ビアホールといったものがサードプレイスの例で、特にヨーロッパでそれらは社会的なガス抜きの場として機能しています。
一方、そうした場がないと家庭や職場、学校における社会的なストレスを、個人的に解消しなければならず、自分でヨガやジョギング、ジムに行くわけですが、そのお金がない人はストレスを解消することすらできないという悪循環が起こってしまうのです」(飯田氏)

 

ストレスは社会的なものでありながら、解決は個人に委ねられるという悪循環。その循環を解消する鍵となる第三の場=インフォーマル・パブリック・ライフとは、一体どういったものをもたらすのでしょうか。飯田氏はインフォーマル・パブリック・ライフの要素を以下のように挙げました。
=====
● 朝から晩までどんな時間でも人がいる
● 誰にでも開かれており、誰しもがそこでゆっくりすることが許される
● あたたかい雰囲気があり、一人で訪れても、誰かと一緒にいるような安心感がある
● そこに行くと気持ちが少し上向きになる
● そこでは人々がリラックスしてくつろぎ、幸せそうな表情をしている
=====
日本では、南池袋公園や丸の内仲通り、商店街や骨董市もインフォーマル・パブリック・ライフの良い例として挙げられるそうです。

 

では、上記のような特徴を持つインフォーマル・パブリック・ライフの社会的意義とは、どういったことがあるのでしょうか。飯田氏は、自分とは異なる世界にいる人の存在を肌で感じることができる「ソーシャルミックスの促進」、頭の中に抱える悩みや問題を一時的に低下させる「カフェセラピーの効果」、そして家庭や仕事での役割に縛られない「本来の自分自身の獲得」に繋がると述べます。

「最後の『本来の自分自身』とは、厳しい社会規範や教育に抑圧されずになんとか残った忘れかけていた自分、つまり第三の自分を指しています。
サードプレイスが実は人間にとって重要なんだとオルデンバーグが主張したように、私は人間にとって第三の自分こそがもっと重要ではないかと提起したいんです。私がニュータウンでの生活で第三の場と第三の自分が得られずに苦しんだように、自分らしくいられる場所とそうあれる時間が街には必要なんだと強く思うようになりました」(飯田氏)

人の暮らしや社会とって重要なインフォーマル・パブリック・ライフですが、それらの充実は街の動きにも影響を与えると言います。社会学者のリチャード・フロリダは「私が聞き取り調査をした人たちは、刺激的で創造的な感情を提供してるところに住みたいし、住む必要があると主張した」と述べたように、コロナ以前には、パリ、ロンドン、ニューヨークなどで、前代未聞の人口増加が進んでいました。飯田氏は、この背景にある人々の願望をこう分析します。

「人がある街へと引っ越す理由には、そこに行けばよりよい暮らしが期待できるとか、もっと自分らしく生きられるのではないかといった願望があります。今日ここに参加されているまちづくりに取り組む方々にとっても、どうすれば自分の地域が人の願望を惹きつけ、発展できるかが大きな課題ではないかと思います。リチャード・フロリダは、そのための鍵となるのは『まず高い能力を持つ人やクリエイティブな人を惹きつけることだ』と述べており、そうしたクリエイティブクラスや若い世代は、ストリートライフのあるコミュニティやウォーカブルな場所に好感を抱く傾向にあります。経済的に栄えるためにはオフィスビルの繋がりだけでは不十分であり、文化的、社会的刺激に満ちた街であるということが重要だと言われています」(飯田氏)

しかし、ストリートライフのあるコミュニティやウォーカブルな場所であればいいというわけではありません。そうしたものの中に、クリエイティブクラスは何を求めているのでしょうか。ここで飯田氏が経験したニュータウンを再び例に挙げます。

「私が住んでいたニュータウンは、ウォーカブルシティとしては非常に良くできた街でしたが、そこでは『子連れの主婦』としての画一的な経験しかできなかったんです。第二や第三の自分はなく、自分らしくありたいと願っても、それを促す場も許容してくれる場も存在しませんでした。この街での自分の正しい生き方とは、このまま2人目の子供を産んで団地の一室を購入して老後を迎えることで、それ以外の可能性を感じられずに毎日を生きていました。こうした画一的なものの見方や価値観しかない街は、それらに違和感がある人にとっては息苦しさを感じて脱出するしかなくなってしまうんです。
こうした自分の経験を踏まえながら特にお伝えしたいのは、インフォーマル・パブリック・ライフを通した経験への開放性が大事だということです。つまり、自分が持つ絶対的な価値観とは全く異なるものに出会った時に、否定せずに肯定的に捉えられる状態であること。これが人を惹きつける街と抜け出したい街の一番の違いであり、クリエイティブクラスもなぜインフォーマル・パブリック・ライフの充実した街を選ぶのかというと、まさにそこが経験への開放性を促す場になっているからなんです」(飯田氏)

経験への開放性が高い場は、視野を広げるとともにより自身の自由な発想も認めてもらえるようになります。これは画一的な価値観の中で苦しんでいる場合には、生き方を左右するほど重要な環境とも言えます。

「改めてインフォーマル・パブリック・ライフがなぜ重要かと言うと、そこでは社会の規則から離れて自分らしく振る舞うことができるとともに、多様な人がいることで視野が広がり、既存の価値観と違うのも肯定的に受け入れやすくなります。そして、そこには新しいこと、異なることに対する寛容な雰囲気があるので、他では許されないような行動や意見も安心してすることができる。つまり自己表現がしやすくなるので、新しいアイデアも肯定されてイノベーションへと繋がっていくのです。
そしてそうした場に大事なものは、居心地の良さだと思っています。多くの人が集まっているかではなく、長い時間滞在したいと思うかどうか、恒常的に居心地が良いかが重要ということです。人々が主体的に過ごせる場をつくるということが、これからのまちづくりの役割なのではないかと思っています」(飯田氏)

 

▷▷▷【開催レポート 全国エリアマネジメントシンポジウム2024_その2】に続きます。


2024年8月30日、全国エリアマネジメントネットワークの第8期の活動振り返りと、第9期の活動方針を発表する総会を開催しました。今回は虎ノ門ヒルズステーションタワー45階の会場にて、東京の街を望みながら多くの会員の皆さまにご参加いただきました。報告がなされた主な内容をレポートします。

 

第8期事業報告

まず、第8期の主な活動と現在の状況について報告を行いました。
総括としては「研究会合同シンポジウムの初開催」、「エリアマネジメント研究交流会の認知向上」、「人材育成プログラムの展開」が主な活動となりました。それぞれの詳細は以下の通りです。

●活動の総括
(1)研究会合同シンポジウムの初開催

これまで「スマートシティ・DX」「グリーン×エリアマネジメント」「ナイトタイムエコノミー」をテーマとした三つの研究会を設立し個々に議論を進めてきましたが、第8期では各議論の成果として「全国エリマネ研究会合同シンポジウム:エリアマネジメントの役割・領域の拡張」を開催。各研究テーマの可能性やエリマネして取り組む意義を紹介しながら、三つのテーマを掛け合わせた都市の価値向上を図る新たな展開について議論を深めました。

(2)エリアマネジメント研究交流会の認知向上

第4回目の開催となったエリアマネジメント研究交流会は、15本の研究発表が集まり、100名以上の方に参加いただきました。本研究交流会で報告をすることを一つの目標とする学生も増えてきており、エリマネに関する研究や調査の報告の場として着実に認知度が向上しています。

(3)人材育成プログラムの展開

人材育成を目的としたプログラムでは、エリマネ実務者向け研修プログラム「プレイスメイキング講座」に加え、包括的にエリマネにおけるマインドを理解する新たなプログラムとして「エリマネマインド養成講座」のパイロット版を実施。エリマネに必要とされるリーダーシップや地域とのコミュニケーション、コーディネート力等を学ぶことを目的に、経験豊富なエリマネ実践者をメンターに迎え、インプットとディスカッションを行いました。今回のパイロット版にてニーズや運営の課題を明らかにした上で、第9期では本格的な開催を検討しています。
また、第5期に立ち上げた若手ネットワーク「AMU35」も継続的に開催し、人材の循環も行われています。

また、海外連携については、海外の組織と具体的な議論を進め、連携体制のベースを構築しました。一方で、当初計画していたアンケート等のリサーチ関係やエリマネウェビナー、行政との対話の機会の実施は着手に至らなかったため、第9期に引き継ぐこととしました。

第9期事業計画

続いて、第9期の事業計画の報告を行いました。これまでの全国エリアマネジメントネットワークでは、「交わる/深める/広める/支える」の4つの方針にて取り組んできましたが、活動の裾野が広がってきたことを踏まえ、第9期からは「高める」を方針に新たに追加。エリマネのプロフェッショナルとしての専門性・実務能力向上の機会を創出することにも注力していきます。

●第9期の主な活動内容

第9期では「エリアマネジメントの振り返りと高め合い」をコンセプトとして、以下の活動を計画しています。

➢ エリアマネジメントの振り返りとこれからの役割の再考と発信
➢ 中間支援組織としての情報蓄積及びエリマネに関わる人・団体の高め合い
➢ エリアマネジメントに関する行政との対話の充実
➢ 研究会・コミュニティ活動の推進を通じたエリアマネジメントの実務者育成
➢ 海外情報の収集やアジア都市との連携活動の展開(エリアマネジメントの海外への展開)
➢ 全国エリアマネジメントネットワークの組織体制の検討

これらを方針とし、特に注力したい事業内容について説明を行いました。

 

(1)情報交換・連携【交わる】

従来のニュースレターの発行に加えて、会員間で日常的に交流や情報交換ができるよう、オンライン等のコミュニケーションツールを活用した環境設備について議論を進めていきます。
また、海外連携では、IDA(International Downtown Association)等の海外ネットワークを通じて、世界各地のBID(Business Improvement District)の情報を蓄積し、情報交換を行っていきます。

(2)エリアマネジメントの社会的な認知向上【広める】

エリマネの社会的な認知向上に向けて、「エリマネを振り返る」ことをテーマにした大規模なシンポジウムを予定しています。また、イベントレポートの配信やウェブサイトの英語対応等を行い、さらなる広報の充実化を図ります。

(3)エリアマネジメント活動の深化・行政との対話・連携の場の構築【深める】

「エリアマネジメント研究交流会」を継続して開催するとともに、「エリアマネジメント政策対話」という新たな議論の場を展開します。これは、国土交通省とともに開催してきた「官民連携まちづくりDay」から発展した取り組みとして、エリマネの推進に必要な政策・制度の活用法や課題について、国、自治体、エリマネ団体といった多様な立場の実務者同士が対話できる機会を創出していきます。

(4)エリアマネジメントに関する各種情報提供やエリアマネジメント団体の強化【支える】

エリマネに関するこれまでのリサーチの成果として、「エリアマネジメント」という言葉が日本で提唱されてから現在までの約20年の動きを俯瞰して整理し、これまでのエリマネの役割や活動領域の広がりを理解するとともに、今後の展望を議論する場を展開する予定です。

(5)エリアマネジメントのプロフェッショナルとしての専門性・実務能力向上の機会【高める】

これまで開催してきた講習会での実践・試行をもとに、エリマネについて様々な観点から学ぶことができる場として「エリマネカレッジ」を開催します。プログラム内容は、第8期にパイロット版を実施した「エリマネマインド養成講座」やエリマネの制度や事例を体系的に学ぶ「エリマネ実務者研修講座」、合宿形式でエリマネのプランニングや事業設計を学ぶ「エリマネ実務者合宿」などを検討しています。
また、第9期から新たに「エリマネアワード」を立ち上げ、各エリマネ団体が行っているエリマネ事業を募集し、実務者同士で評価し合い、高め合う場を展開していきます。

 

最後に、全国エリアマネジメントネットワークの立ち上げから活動を牽引してくださった小林重敬氏が、第8期をもって会長を退任されることとなりました。退任の挨拶として、エリマネの可能性について次のように期待を寄せました。

小林 重敬 氏

「全国エリアマネジメントネットワークは約10年前に発足し、その中で様々な成果が上がってきたと思います。一つは、全国でエリマネ活動をしている団体が増えたこと。大都市を中心とした団体から、いまもっとも活動が活発化している中都市、それから最近では地方の小さな都市でも活動があり、あらゆる地域でエリマネ活動が展開できることがわかってきました。また、これまでは商業地域での活動が多くを占めていましたが、最近では住宅地でのエリマネ活動が徐々に芽生えています。
全国でのエリマネ活動は、非常に幅広く展開している過程にありますので、今後も皆さんで力を合わせてより一層ネットワークを広げていただきたいと思います」(小林氏)

 

後任には東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授の出口敦氏が就き、「新しい時代を築いていくための課題は多くありますが、そうした課題にも前向きにチャレンジしていきたいと思っています」とこれからの活動に向けた想いを述べました。

新に会長に就任する 出口 敦 氏

 

第8期の全国エリアマネジメントネットワークでは、研究会合同シンポジウムや人材育成プログラムの展開など、これまで積み上げてきた知見やノウハウをさらに実務面に生かすための展開を行いました。
会員も年々多くの方にご入会いただき、益々全国でのエリマネ活動の発展が期待されます。各地域での取り組みがより推進されるように、全国エリアマネジメントネットワークでは繋がりをより強固なものへとしていきます。体制が変わり新たなスタートを切る全国エリアマネジメントネットワークの活動に、これからもぜひご期待ください。

 

☞総会資料はこちらからダウンロードできます。
全国エリマネ第9回通常総会資料

沢山の皆様のご尽力のもと、2024年6月29日 会場発表及びオンライン配信にて「エリアマネジメント研究交流会 第4回」を実施致しました。

第4回は調査報告4件、研究報告5件、事例報告6件の、全15件の発表エントリーがありました。
▷当日のプログラムはこちら

今回の研究発表は、昨年の2会場に分けての開催とは違って、4回目にしてほぼ初めて、実行委員が一堂に会しての開催となりました。
会場全体で意見交換をしようという気概にあふれており、加えて、今回より選考メンバーとして全国エリマネ幹事メンバーも参加したことで、学識及び研究者のご意見に加えて実務経験者の視点も踏まえた質問や意見が多数飛び交い、各発表とも時間が足りないほど充実した情報意見交換・議論ができたと感じております。

【アワード受賞者】
第4回のアワードは以下の方々が受賞されました。 ※「◎」は発表者

【調査研究部門】
◇ふるさと納税を活用した地方公共団体におけるエリアマネジメント団体への支援
                                                                         ―取組み事例をもとにした考察―
   ◎高橋 裕美(京都大学経営管理大学院官民協働まちづくり実践講座)
      要藤 正任(京都大学経営管理大学院官民協働まちづくり実践講座)
      吉田  恭(京都大学経営管理大学院官民協働まちづくり実践講座)

◇大阪・難波周辺におけるエリアマネジメントと歩行者回遊・滞留の実態
   ◎高木 悠里(大阪公立大学大学院)、土屋 文佳(大阪公立大学大学院)
      遠藤 真仁(大阪公立大学大学院)、
      神田 佳祐(大阪公立大学大学院)、嘉名 光市(大阪公立大学大学院)

【研究報告部門】
◇CVMと共分散構造分析を用いたエリアマネジメントの評価に関する研究
                                                                               -品川シーズンテラスを対象として-
   ◎諸藤 弘之(NTTアーバンソリューションズ株式会社)、内山 武士(NTTアーバンソリューションズ株式会社)、
      竹内 雄大(NTTアーバンソリューションズ株式会社)、高橋 美玖(NTTアーバンソリューションズ株式会社)、
      桑田  仁(芝浦工業大学)、山澤 浩司(芝浦工業大学)

◇英国・アイルランドにおける地方都市BIDの活動評価に関する研究
   ◎大島 陸人(岡山大学大学院環境生命自然科学研究科・院生)
      堀  裕典(岡山大学 学術研究院 准教授)

【事例報告部門】
◇まちの会所における役割の変化〜名古屋市錦2丁目の会所における2010年前後を比較して〜
   ◎黒部 真由(一橋大学大学院社会学研究科・院生)
      名畑  恵(錦二丁目まちづくり協議会)、堂免 隆浩(一橋大学)

【ベストプレゼンテーション部門】
◇秋田県男鹿市における酒造会社を起点としたまちづくりの取組
   ◎三好 史晃(株式会社三菱地所設計)


第4回 アワード受賞者の皆様

 

本研究交流会恒例となりました“舗装材トロフィーシリーズ”
第4回目のトロフィーは、大阪 御堂筋よりご提供頂きました舗装材のトロフィーです。
受賞者の方々には、御名前とタイトルを記載し、制作後に各受賞者に贈呈されます。受賞者の皆様は楽しみにお待ちください。

トータル7時間という長丁場ではありましたが、多岐にわたる視点での発表を伺うことができ、大変有意義な会となりました。
今回参加の学生の方から「昨年、配信で個の発表会を見て今年は発表することをモチベーションにしてきたので参加出来て嬉しい」という大変嬉しいお言葉を頂きました。実行委員一同大変感動しました!!
初回から発表者として多くの学生や若手の方に参加いただいており、エリアマネジメントの裾野の広がりも実感しているところです。
終了後に実施した交流会でも、経験や世代を問わず楽しく、時に真剣に意見交換が行われており、本研究会の目指す“交流の場”が育まれていることを嬉しく思っております。

運営面でも、大阪公立大学と東京都市大学の学生さんにサポートとしてお手伝いいただいたことで、更に活気が出たように感じました。
本研究会に様々な点から関わってくださる皆様と共に、更に盛り上がっていければ嬉しく思います。
引き続き、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

最後に、参加者の皆様、付き合いいただきました視聴者の皆様、ありがとうございました。

▲第4回選考委員▲
○実行委員長:嘉名 光市(大阪公立大学院 教授)
○各セッション担当委員
【調査研究部門】司会:宋 俊煥(山口大学 教授)
【研究報告部門】司会:丹羽 由佳理(東京都市大学 准教授)
【事例報告部門】司会:要藤 正任(京都産業大学 教授)
【実行委員メンバー】泉山 塁威(日本大学 准教授)、高木 悠里(大阪公立大学 講師)、野原  卓(横浜国立大学 准教授)、
堀  裕典(岡山大学 准教授)、籔谷 祐介(富山大学 講師)、
【選考メンバー】金城 敦彦(一社)大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会/全国エリアマネジメントネットワーク副会長)
後藤 太一(リージョンワークス合同会社 代表社員/全国エリアマネジメントネットワーク幹事)
○全体司会・運営:全国エリアマネジメントネットワーク事務局
【事務局】長谷川 隆三(全国エリアマネジメントネットワーク)、関口 泰子(全国エリアマネジメントネットワーク)、
三牧 浩也(UDCネットワーク)
【運営サポート】大阪公立大学大学院 工学研究科 都市系専攻 都市計画研究室の皆さん、東京都市大学環境学部 丹羽研究室の皆さん

会の実施・運営にご尽力いただきました皆様、ありがとうございます。

今年も”エリアマネジメント研究交流会”開催します!

エリアマネジメント研究交流会の第4回を今年度も開催致します。
「エリアマネジメント研究交流会」は、全国エリアマネジメントネットワーク、UDCネットワークの2者による実行委員会で運営しており、エリアマネジメント研究の深化、すそ野の拡大、研究者と実務者の意見交換・交流の場の提供を目的としています。
本研究交流会では、エリアマネジメントに関する調査、研究や実践について広く発表者を募り、研究者同士、研究者と実務者での議論を通じて、エリアマネジメントの役割や価値・評価、実践知等についての知見を深め、共有していきたいと考えております。

今年は6月29日開催です。

第4回として2024年6月29日(土)に開催することと致しました。5月より発表者の募集を行いますので奮ってご参加ください。本研究交流会は、出来るだけ多くの発表が行われるよう厳格な審査等は行いません。また、一定の結論や独創性、先駆性を求めるものでもありません。着手したばかりの調査、研究でも広く受け付けますので、よろしくお願いいたします。
※開催方式につきましては、「発表者及び実行委員会のみ会場参加にてオンライン配信」を想定しております。

▼研究会に関する詳細及び研究交流会へのエントリーについては、下記資料をダウンロードください。▼
☛ ダウンロード 【ご案内】エリアマネジメント研究交流会第4回について
☛ ダウンロード 【ES】エリアマネジメント研究交流会第4回_エントリーシート

研究交流会 第3回について

昨年7月1日に第3回を開催した研究交流会では21件の発表がありました。第3回のアワード受賞者については以下のページをご確認ください。 第3回の梗概集もダウンロード頂けます。

開催後記 エリアマネジメント研究交流会 第3回

 

エリアマネジメント研究交流会について

研究交流会にエントリーされる方は、下記をご確認ください。

2023年9月4日、全国エリアマネジメントシンポジウム2023を福岡・天神にて開催しました。今回は「これからの“まちなか”における文化・クリエイティビティを考える」をテーマに、福岡を拠点にあらゆる分野で活躍されるステークホルダーの方に登壇いただき、議論を交わしていただきました。

文化・クリエイティブを切り口に二部構成で、多様なトピックが展開した3時間に渡る【開催レポート_その2】です。

▷▷▷【開催レポート_その1】はこちら。

 

SESSION2:エリアマネジメントはどうする【エリアマネジメント団体の方々によるディスカッション】

続いての第二部では、第一部でのトークを踏まえて、街にあるさまざまな空間やコンテンツを扱うエリマネは、都市に多様な文化的・創造的アクティビティを展開していくために、どのような役割を担うべきか、文化芸術といった要素をどう受け止めていくべきかを考えていきます。

このセッションのコーディネーターを担当する東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授の出口敦氏は次のように切り出しました。

東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授 出口敦氏

 

「シンポジウムに参加されている皆さんは普段エリマネの実務に携わられていて、さまざまな業務に追われていると思います。ただ、目の前のことに精一杯になっていると、何のためにまちづくりをしているのか俯瞰して考える時間がなかなかないのではないでしょうか。そういった点で、年に一度実務者が集まって原点に立ち返り、自分たちの取り組みの意味を考え直す機会は非常に重要だと思います。ここからはまさにエリマネの役割について議論を深めていきますので、皆さんのお考えにも繋がっていければと思います」(出口氏)

第二部でも、まずは各登壇者の方より現在の活動をご紹介いただきました。

<登壇者>
須賀大介氏|福岡移住計画 代表
三好剛平氏|三声舎 代表
内野豊臣氏|博多まちづくり推進協議会
兼子慎一郎氏|博多まちづくり推進協議会
荒牧正道氏|We Love天神協議会
黒川文香氏|We Love天神協議会
吉田宏幸氏|福岡市経済観光文化局

●須賀大介氏|福岡移住計画 代表

須賀大介氏は、福岡移住サポートプロジェクトである「福岡移住計画」を立ち上げて、移住者のサポートやコミュニティ情報の発信を行っています。

「福岡移住計画では、居場所、食べていくための仕事、理想的な住まいの『居食住』に関する情報を提供し、移住者の暮らしを広くサポートする活動を行っています。元々は東京で起業していたのですが、3.11の震災後に生きる場所を改めて考えるようになり、10年前に福岡に移りました。福岡の空気感や人の優しさに魅力を感じ、ゆかりのないまま飛び込んだのですが、地域の方に非常に支えいただいて今に至っています」(須賀氏)

その他にも、コワーキングスペースや宿泊施設といった場の運営を広く手掛けられています。

「自分自身、プレイヤー同士が繋がる場を作っていますが、その重要性を今日改めて感じました。やはり近いところで活動していてもまだまだ繋がれていないですし、まちづくりに関わる人たちが集まるような場がないことに気づかされ、これは一つの課題と言えるかもしれません」(須賀氏)

 

●三好剛平氏|三声舎 代表

三好剛平氏は、福岡を拠点に文化芸術にかかわるプロジェクトの企画・制作を手掛けられており、アジアの映画上映・交流プロジェクト『Asian Film Joint』の主宰や九州のアート・カルチャーシーンを発信するラジオ番組への出演など幅広く活動されています。

活動のきっかけとなったのが、2010年から5年間開催された『まちなかアートギャラリー福岡』というアートプロジェクトです。福岡市とも主催側として、アーティストと関係を深めながら、アートを街に根付かせるようと奔走していたものの、最終的には予算がストップしたことで時間をかけて育ててきたものを終えなければならないことがあったそうです。

「先程のセッションにもあったように、アーカイブ化や活動を蓄積することを強く意識するようになったきっかけでもありました」と話します。

そうした経験から、福岡市が30年間実施していた『アジアフォーカス・福岡国際映画祭』の終了を受けて、その後継となるプロジェクトとして『Asian Film Joint』を助成金を集めて2021年に立ち上げ、福岡に蓄積されてきたアジアの映画監督たちとのネットワークを、財産として引き続き活かしていくために取り組まれています。

「地域にすでにあるものにもう一度血を送り直すことで、いくらでも活用のしようがありますし、そうした活動はその街や人が積み重ねてきた文化に対する自分たちなりの回答であり、未来に繋いでいくことだと思っています」(三好氏)

 

●内野豊臣氏・兼子慎一郎氏|博多まちづくり推進協議会
博多まちづくり推進協議会 事務局長 内野 豊臣 氏
博多まちづくり推進協議会 兼子 慎一郎氏

博多まちづくり推進協議会は、博多駅を中心に近隣の企業や学校、行政など180団体によって組織されています。これまでのセッションを受けて、博多まちづくり推進協議会の内野氏、兼子氏からそれぞれコメントをいただきました。

「福岡市内でもWe Love天神協議会と博多まちづくり推進協議会の二つのエリマネ団体があります。博多のエリマネというのは、1km程度の範囲で取り組んでいるんです。福岡という広いエリアではなく、敢えて博多と天神といった狭いエリアを対象にしてお互い活動してるということが、街の個性を失わないことに繋がっているのではと思います」(内野氏)

「エリマネの役割は建物に血を流し込むことが大事なのではと考えています。ただ、協議会の事務局スタッフも人数が限られているため、自分たちですべて主催すると考えるのではなく、恒常的にやるためにはさまざまな分野のプレイヤーの方と連携を取って進めていくべきだと改めて思いました」(兼子氏)

 

●荒牧正道氏・黒川文香氏|We Love天神協議会
We Love天神協議会 事務局長 荒牧 正道氏
We Love天神協議会 黒川 文香氏

We Love天神協議会は、134の会員とともに天神の価値向上や来街促進を目的に活動しています。We Love天神協議会の荒牧氏、黒川氏からコメントいただきました。

「協議会の会員さまと毎月天神の将来について議論を行っておりまして、その中で、多様な方々と連動しながら街の課題解決に挑んでいき、新たな価値を生み出していくことがこの街の魅力を引き出す上で重要なことだと話し合っています。そうしたことを積み上げて、世界にも届くような福岡の魅力を引き出していきたいと思っています」(荒牧氏)

「エリマネはイベント関連の取り組みが印象として強いですが、交通施策や防災など本当に多様な分野を包括しています。やはりエリアを豊かにするためには、さまざまな人にとって恒常的に楽しめるものであるべきですので、長期かつ広域を見据えて天神がどうあるべきかをじっくり考えながら一つ一つ物事を進めていきたいと思っています」(黒川氏)

 

●吉田宏幸氏|福岡市経済観光文化局

最後に福岡市経済観光文化局の吉田宏幸氏より、全体を受けての感想をいただきました。

「コロナを経て、観光はすでに以前の状態に回復していますが、文化芸術活動は8割程度に留まっています。やはりコロナ禍で文化芸術に触れられなかった層や、あるいはそうした場所に行く機会を失われたまま習慣が戻らないような人たちがいるんじゃないかと考えています。そうした状況を踏まえると、新しい層へアプローチやインバウンドなど観光施策の中に文化的要素を取り込んで、コロナ禍以前を超えるくらいの状況を目指していかなければならないのではと思っています」(吉田氏)

続いてフリーディスカッションへ移ります。文化芸術に関わる立場としてエリマネに求めること、どういった姿勢で取り組むべきか議論が交わされました。

 

出口 コロナ禍の3年間の影響は大きかったと思いますが、その後にエリマネがやるべきことはさまざまあると思います。三好さんにお伺いしたいのですが、文化芸術に関わる取り組みをされる立場としてエリマネに求めることはありますか?

 

三好 文化芸術にまつわるプレイヤーの方、エリマネ団体の方それぞれとお話ししていると、共通テーマとして持っているはずの「文化」に対する解像度が結構違うなと感じます。

エリマネの議論において、「文化をまちづくりに活用する」といった表現を耳にすることがありますが、アーティストは無償だとしても、自分たちが納得する作品を届けたいと一番に考えているんですね。そういった大事にしているものへの理解が必要ですし、ちゃんと理解できるまでとことん付き合って、一緒に汗をかくということをしないといけないんです。

彼らが育ててきた文化を表面だけさらって利用してもやはり持続性がないですし、こうした姿勢が非常に重要だと思います。

 

出口 アートを消費の対象として捉えてはいけないということですね。街は基本的にものを買ったり食事をしたり消費をする場所ですが、その対象の一つとしてアートも捉えてしまうと、次に繋がっていきません。好循環を生み出していくためには、アートを育てていくという意識を持つ必要がありますね。

須賀さんはいかがでしょうか。

 

須賀 私はHOOD天神というコミュニティスペースも運営しておりまして、移住者同士が繋がり、さまざまな活動が生み出される場所になっています。福岡にゆかりがない人も一歩入り込める、街の余白みたいなものを提供させてもらっているのかなと思います。

先程のセッションでも話にありましたが、多様な世代や分野の人が混ざる場が必要だと思うので、エリマネに関わる皆さんにはそういった視点で場を作っていただけるといいのではと思います。

 

出口 人が集まり交流する場としての街の屋外空間や公共空間の意義はコロナ以降で変わってきたと思います。コロナ前までは賑わいづくりを盛んにやっていましたが、そうしたことができなくなり、屋外でくつろぎを提供することが重視されるようになりましたね。同時に、オンライン化が進んだことでリアル空間の価値が問われるようにもなりました。

そうした現状を踏まえて、エリマネ団体の方々は現在どういった取り組みをされているのでしょうか。

 

兼子 道路や公開空地の利活用が、コロナ以降に制度含めて変わってきています。例えばコロナによって喫煙所が閉鎖になり公園での喫煙者が増えたのですが、子どもが遊べなくなってしまったことを受けて、仮設喫煙所を設置して本来の緑のスペースを取り戻す社会実験を実施しました。実験のため現在は元の状態に戻ってしまったのですが、今後Park-PFIが採択される予定でして、事業者の方と常設の喫煙所の設置や文化的な役割についても検討していきたいと思っています。

 

出口 We Love 天神協議会さんはどうでしょうか。

 

荒牧 天神には広場がたくさんあるので、先程のセッションにあったような2時5時の間を潰せるものが日常的に展開されているといいのではと思いました。また、天神は地下ネットワークが発達していますので、地下空間のあり方についても有効に活用していきたいと考えています。

 

出口 日常的な場面も含めて、2時5時の間をどう過ごせるかをしっかり編集してアーカイブすることは、観光客にとって有益なだけでなく、地域の人が街の個性を認識することに繋がると感じます。そういったことを主導することこそ、エリマネ団体の役割ではないのでしょうか。

今日エリマネの役割がいろいろと出てきましたが、文化芸術に寄与していくためにはどういったことを心掛けていけば良いでしょうか。

 

三好 街一体でみんなが同じ目標を持って達成に向かうと考えるのではなく、数十〜数百人の多様なコミュニティそれぞれが、いいねと思える状態を集積していくことが理想的だと思います。まずは見渡せる範囲の人たちを楽しませるにはどうしたらいいのか、これからそういったことが問われるんじゃないでしょうか。

2時5時問題も、人それぞれの感性や価値観に合わせて情報を提供できるよう解像度を高められると、さまざまな分野に寄与するものになると思います。やはり小さなことを積み上げていくことが大事ですよね。

 

出口 集団として平均化された楽しさを追求することも重要ですが、やはり多様な一人一人が参加して楽しんでもらい個人のQOLを高めていくことも重要だと思います。エリマネ団体の方には、定性的なものでもいいので、一人一人のQOLを高めるような評価にもっと目を向けてもいいかもしれません。

 

須賀 価値観の多様化でいくと、クリエイターがどこの街で創造性を発揮したいと思うかという視点も大事です。そこでやる意義を見出してもらえるよう、街の文脈や強みをどう編集して見せていくのかをエリマネの方や各プレイヤーがともに考えながら、場を生み出すことが重要だと思います。

また、場を運営して持続させることも非常に難しいところですので、我々が連携しながら持続させる仕組みを提供させていただきたいなと思いました。

 

出口 エリマネ団体の皆さんはいかがでしょうか。

 

内野 まずは皆さんが活躍できて、多様な方が繋がれる場を作ることとが重要だと思いました。あとは街の魅力に気づいてもらうきっかけ作りも我々の役割ですね。地域の人も見落としているような魅力をエリマネがしっかり掬い上げて、発信していくことを考えていきたいです。

 

吉田 The New York Timesが発表している2025年に世界で訪れるべき都市に、日本では盛岡市と福岡市が選ばれました。今年世界水泳選手権が開催され、実際にそのような状況になってきているように感じます。

そうした中で、短期的ですがまずは2025年に向けて、文化振興をどう図っていくか考えるべき時期なのではないでしょうか。2025年には新しい文化施設ができ、その後も福岡市が発展を遂げてきたものがまた新たに生まれ変わるタイミングが次々とやってきます。そういった動きと足並みを揃えて、皆さんと文化芸術を進めていくことができればと考えています。

 

出口 エリマネの役割は、時間と場と人の繋がりを提供することだと松岡さんがおっしゃっていましたが、「時間」というものが非常に印象深いキーワードだと思いました。

都市開発は空間をつくり出すことと言えますが、公開空地をつくり出したからといって、必ずしも刺激的な時間を提供することまではできません。空間を提供して、空間をマネジメントして、さらに刺激的な時間を提供していく、ということがコロナ以降のエリマネの役割ではないかと思います。ビジネスや産業ではなく文化的なもののパワーによって、知性や心に訴えかけるような時間をどうつくり出すかを考えるべきではないでしょうか。

今日ご登壇いただいた二つの協議会は、駐輪場の問題や交通渋滞といった地域の課題解決を使命として始まりましたが、現在のエリマネの役割は課題解決から、街の価値を問う価値創造が求められる時代になってきていると思います。そういった気概を持って今後取り組んでいただければと思います。

 

最後に、本会副会長である一般社団法人大手町丸の有楽町地区まちづくり協議会事務局長 金城敦彦氏より閉会のご挨拶がありました。

「この団体名にもあるネットワークという言葉は、各地のまちづくり団体だけでなく、社会を作るような文化活動をされている方々とのネットワークもしっかり築いていかなければならないと改めて感じました。今日さまざまな分野で活動される方々のリアルなお話を伺って、エリマネを担う立場としてはやはり現場の声や営みを大切にして、引き続き皆さんと支え合いながらまちづくりに取り組んでいきたいと思っています」(金城氏)

全国エリアマネジメントネットワーク副会長/一般社団法人大手町丸の有楽町地区まちづくり協議会事務局長  金城 敦彦氏
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