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2023年9月4日、全国エリアマネジメントシンポジウム2023を福岡・天神にて開催しました。今回は「これからの“まちなか”における文化・クリエイティビティを考える」をテーマに、福岡を拠点にあらゆる分野で活躍されるステークホルダーの方に登壇いただき、議論を交わしていただきました。

文化・クリエイティブを切り口に二部構成で、多様なトピックが展開した3時間に渡る【開催レポート_その2】です。

▷▷▷【開催レポート_その1】はこちら。

 

SESSION2:エリアマネジメントはどうする【エリアマネジメント団体の方々によるディスカッション】

続いての第二部では、第一部でのトークを踏まえて、街にあるさまざまな空間やコンテンツを扱うエリマネは、都市に多様な文化的・創造的アクティビティを展開していくために、どのような役割を担うべきか、文化芸術といった要素をどう受け止めていくべきかを考えていきます。

このセッションのコーディネーターを担当する東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授の出口敦氏は次のように切り出しました。

東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授 出口敦氏

 

「シンポジウムに参加されている皆さんは普段エリマネの実務に携わられていて、さまざまな業務に追われていると思います。ただ、目の前のことに精一杯になっていると、何のためにまちづくりをしているのか俯瞰して考える時間がなかなかないのではないでしょうか。そういった点で、年に一度実務者が集まって原点に立ち返り、自分たちの取り組みの意味を考え直す機会は非常に重要だと思います。ここからはまさにエリマネの役割について議論を深めていきますので、皆さんのお考えにも繋がっていければと思います」(出口氏)

第二部でも、まずは各登壇者の方より現在の活動をご紹介いただきました。

<登壇者>
須賀大介氏|福岡移住計画 代表
三好剛平氏|三声舎 代表
内野豊臣氏|博多まちづくり推進協議会
兼子慎一郎氏|博多まちづくり推進協議会
荒牧正道氏|We Love天神協議会
黒川文香氏|We Love天神協議会
吉田宏幸氏|福岡市経済観光文化局

●須賀大介氏|福岡移住計画 代表

須賀大介氏は、福岡移住サポートプロジェクトである「福岡移住計画」を立ち上げて、移住者のサポートやコミュニティ情報の発信を行っています。

「福岡移住計画では、居場所、食べていくための仕事、理想的な住まいの『居食住』に関する情報を提供し、移住者の暮らしを広くサポートする活動を行っています。元々は東京で起業していたのですが、3.11の震災後に生きる場所を改めて考えるようになり、10年前に福岡に移りました。福岡の空気感や人の優しさに魅力を感じ、ゆかりのないまま飛び込んだのですが、地域の方に非常に支えいただいて今に至っています」(須賀氏)

その他にも、コワーキングスペースや宿泊施設といった場の運営を広く手掛けられています。

「自分自身、プレイヤー同士が繋がる場を作っていますが、その重要性を今日改めて感じました。やはり近いところで活動していてもまだまだ繋がれていないですし、まちづくりに関わる人たちが集まるような場がないことに気づかされ、これは一つの課題と言えるかもしれません」(須賀氏)

 

●三好剛平氏|三声舎 代表

三好剛平氏は、福岡を拠点に文化芸術にかかわるプロジェクトの企画・制作を手掛けられており、アジアの映画上映・交流プロジェクト『Asian Film Joint』の主宰や九州のアート・カルチャーシーンを発信するラジオ番組への出演など幅広く活動されています。

活動のきっかけとなったのが、2010年から5年間開催された『まちなかアートギャラリー福岡』というアートプロジェクトです。福岡市とも主催側として、アーティストと関係を深めながら、アートを街に根付かせるようと奔走していたものの、最終的には予算がストップしたことで時間をかけて育ててきたものを終えなければならないことがあったそうです。

「先程のセッションにもあったように、アーカイブ化や活動を蓄積することを強く意識するようになったきっかけでもありました」と話します。

そうした経験から、福岡市が30年間実施していた『アジアフォーカス・福岡国際映画祭』の終了を受けて、その後継となるプロジェクトとして『Asian Film Joint』を助成金を集めて2021年に立ち上げ、福岡に蓄積されてきたアジアの映画監督たちとのネットワークを、財産として引き続き活かしていくために取り組まれています。

「地域にすでにあるものにもう一度血を送り直すことで、いくらでも活用のしようがありますし、そうした活動はその街や人が積み重ねてきた文化に対する自分たちなりの回答であり、未来に繋いでいくことだと思っています」(三好氏)

 

●内野豊臣氏・兼子慎一郎氏|博多まちづくり推進協議会
博多まちづくり推進協議会 事務局長 内野 豊臣 氏
博多まちづくり推進協議会 兼子 慎一郎氏

博多まちづくり推進協議会は、博多駅を中心に近隣の企業や学校、行政など180団体によって組織されています。これまでのセッションを受けて、博多まちづくり推進協議会の内野氏、兼子氏からそれぞれコメントをいただきました。

「福岡市内でもWe Love天神協議会と博多まちづくり推進協議会の二つのエリマネ団体があります。博多のエリマネというのは、1km程度の範囲で取り組んでいるんです。福岡という広いエリアではなく、敢えて博多と天神といった狭いエリアを対象にしてお互い活動してるということが、街の個性を失わないことに繋がっているのではと思います」(内野氏)

「エリマネの役割は建物に血を流し込むことが大事なのではと考えています。ただ、協議会の事務局スタッフも人数が限られているため、自分たちですべて主催すると考えるのではなく、恒常的にやるためにはさまざまな分野のプレイヤーの方と連携を取って進めていくべきだと改めて思いました」(兼子氏)

 

●荒牧正道氏・黒川文香氏|We Love天神協議会
We Love天神協議会 事務局長 荒牧 正道氏
We Love天神協議会 黒川 文香氏

We Love天神協議会は、134の会員とともに天神の価値向上や来街促進を目的に活動しています。We Love天神協議会の荒牧氏、黒川氏からコメントいただきました。

「協議会の会員さまと毎月天神の将来について議論を行っておりまして、その中で、多様な方々と連動しながら街の課題解決に挑んでいき、新たな価値を生み出していくことがこの街の魅力を引き出す上で重要なことだと話し合っています。そうしたことを積み上げて、世界にも届くような福岡の魅力を引き出していきたいと思っています」(荒牧氏)

「エリマネはイベント関連の取り組みが印象として強いですが、交通施策や防災など本当に多様な分野を包括しています。やはりエリアを豊かにするためには、さまざまな人にとって恒常的に楽しめるものであるべきですので、長期かつ広域を見据えて天神がどうあるべきかをじっくり考えながら一つ一つ物事を進めていきたいと思っています」(黒川氏)

 

●吉田宏幸氏|福岡市経済観光文化局

最後に福岡市経済観光文化局の吉田宏幸氏より、全体を受けての感想をいただきました。

「コロナを経て、観光はすでに以前の状態に回復していますが、文化芸術活動は8割程度に留まっています。やはりコロナ禍で文化芸術に触れられなかった層や、あるいはそうした場所に行く機会を失われたまま習慣が戻らないような人たちがいるんじゃないかと考えています。そうした状況を踏まえると、新しい層へアプローチやインバウンドなど観光施策の中に文化的要素を取り込んで、コロナ禍以前を超えるくらいの状況を目指していかなければならないのではと思っています」(吉田氏)

続いてフリーディスカッションへ移ります。文化芸術に関わる立場としてエリマネに求めること、どういった姿勢で取り組むべきか議論が交わされました。

 

出口 コロナ禍の3年間の影響は大きかったと思いますが、その後にエリマネがやるべきことはさまざまあると思います。三好さんにお伺いしたいのですが、文化芸術に関わる取り組みをされる立場としてエリマネに求めることはありますか?

 

三好 文化芸術にまつわるプレイヤーの方、エリマネ団体の方それぞれとお話ししていると、共通テーマとして持っているはずの「文化」に対する解像度が結構違うなと感じます。

エリマネの議論において、「文化をまちづくりに活用する」といった表現を耳にすることがありますが、アーティストは無償だとしても、自分たちが納得する作品を届けたいと一番に考えているんですね。そういった大事にしているものへの理解が必要ですし、ちゃんと理解できるまでとことん付き合って、一緒に汗をかくということをしないといけないんです。

彼らが育ててきた文化を表面だけさらって利用してもやはり持続性がないですし、こうした姿勢が非常に重要だと思います。

 

出口 アートを消費の対象として捉えてはいけないということですね。街は基本的にものを買ったり食事をしたり消費をする場所ですが、その対象の一つとしてアートも捉えてしまうと、次に繋がっていきません。好循環を生み出していくためには、アートを育てていくという意識を持つ必要がありますね。

須賀さんはいかがでしょうか。

 

須賀 私はHOOD天神というコミュニティスペースも運営しておりまして、移住者同士が繋がり、さまざまな活動が生み出される場所になっています。福岡にゆかりがない人も一歩入り込める、街の余白みたいなものを提供させてもらっているのかなと思います。

先程のセッションでも話にありましたが、多様な世代や分野の人が混ざる場が必要だと思うので、エリマネに関わる皆さんにはそういった視点で場を作っていただけるといいのではと思います。

 

出口 人が集まり交流する場としての街の屋外空間や公共空間の意義はコロナ以降で変わってきたと思います。コロナ前までは賑わいづくりを盛んにやっていましたが、そうしたことができなくなり、屋外でくつろぎを提供することが重視されるようになりましたね。同時に、オンライン化が進んだことでリアル空間の価値が問われるようにもなりました。

そうした現状を踏まえて、エリマネ団体の方々は現在どういった取り組みをされているのでしょうか。

 

兼子 道路や公開空地の利活用が、コロナ以降に制度含めて変わってきています。例えばコロナによって喫煙所が閉鎖になり公園での喫煙者が増えたのですが、子どもが遊べなくなってしまったことを受けて、仮設喫煙所を設置して本来の緑のスペースを取り戻す社会実験を実施しました。実験のため現在は元の状態に戻ってしまったのですが、今後Park-PFIが採択される予定でして、事業者の方と常設の喫煙所の設置や文化的な役割についても検討していきたいと思っています。

 

出口 We Love 天神協議会さんはどうでしょうか。

 

荒牧 天神には広場がたくさんあるので、先程のセッションにあったような2時5時の間を潰せるものが日常的に展開されているといいのではと思いました。また、天神は地下ネットワークが発達していますので、地下空間のあり方についても有効に活用していきたいと考えています。

 

出口 日常的な場面も含めて、2時5時の間をどう過ごせるかをしっかり編集してアーカイブすることは、観光客にとって有益なだけでなく、地域の人が街の個性を認識することに繋がると感じます。そういったことを主導することこそ、エリマネ団体の役割ではないのでしょうか。

今日エリマネの役割がいろいろと出てきましたが、文化芸術に寄与していくためにはどういったことを心掛けていけば良いでしょうか。

 

三好 街一体でみんなが同じ目標を持って達成に向かうと考えるのではなく、数十〜数百人の多様なコミュニティそれぞれが、いいねと思える状態を集積していくことが理想的だと思います。まずは見渡せる範囲の人たちを楽しませるにはどうしたらいいのか、これからそういったことが問われるんじゃないでしょうか。

2時5時問題も、人それぞれの感性や価値観に合わせて情報を提供できるよう解像度を高められると、さまざまな分野に寄与するものになると思います。やはり小さなことを積み上げていくことが大事ですよね。

 

出口 集団として平均化された楽しさを追求することも重要ですが、やはり多様な一人一人が参加して楽しんでもらい個人のQOLを高めていくことも重要だと思います。エリマネ団体の方には、定性的なものでもいいので、一人一人のQOLを高めるような評価にもっと目を向けてもいいかもしれません。

 

須賀 価値観の多様化でいくと、クリエイターがどこの街で創造性を発揮したいと思うかという視点も大事です。そこでやる意義を見出してもらえるよう、街の文脈や強みをどう編集して見せていくのかをエリマネの方や各プレイヤーがともに考えながら、場を生み出すことが重要だと思います。

また、場を運営して持続させることも非常に難しいところですので、我々が連携しながら持続させる仕組みを提供させていただきたいなと思いました。

 

出口 エリマネ団体の皆さんはいかがでしょうか。

 

内野 まずは皆さんが活躍できて、多様な方が繋がれる場を作ることとが重要だと思いました。あとは街の魅力に気づいてもらうきっかけ作りも我々の役割ですね。地域の人も見落としているような魅力をエリマネがしっかり掬い上げて、発信していくことを考えていきたいです。

 

吉田 The New York Timesが発表している2025年に世界で訪れるべき都市に、日本では盛岡市と福岡市が選ばれました。今年世界水泳選手権が開催され、実際にそのような状況になってきているように感じます。

そうした中で、短期的ですがまずは2025年に向けて、文化振興をどう図っていくか考えるべき時期なのではないでしょうか。2025年には新しい文化施設ができ、その後も福岡市が発展を遂げてきたものがまた新たに生まれ変わるタイミングが次々とやってきます。そういった動きと足並みを揃えて、皆さんと文化芸術を進めていくことができればと考えています。

 

出口 エリマネの役割は、時間と場と人の繋がりを提供することだと松岡さんがおっしゃっていましたが、「時間」というものが非常に印象深いキーワードだと思いました。

都市開発は空間をつくり出すことと言えますが、公開空地をつくり出したからといって、必ずしも刺激的な時間を提供することまではできません。空間を提供して、空間をマネジメントして、さらに刺激的な時間を提供していく、ということがコロナ以降のエリマネの役割ではないかと思います。ビジネスや産業ではなく文化的なもののパワーによって、知性や心に訴えかけるような時間をどうつくり出すかを考えるべきではないでしょうか。

今日ご登壇いただいた二つの協議会は、駐輪場の問題や交通渋滞といった地域の課題解決を使命として始まりましたが、現在のエリマネの役割は課題解決から、街の価値を問う価値創造が求められる時代になってきていると思います。そういった気概を持って今後取り組んでいただければと思います。

 

最後に、本会副会長である一般社団法人大手町丸の有楽町地区まちづくり協議会事務局長 金城敦彦氏より閉会のご挨拶がありました。

「この団体名にもあるネットワークという言葉は、各地のまちづくり団体だけでなく、社会を作るような文化活動をされている方々とのネットワークもしっかり築いていかなければならないと改めて感じました。今日さまざまな分野で活動される方々のリアルなお話を伺って、エリマネを担う立場としてはやはり現場の声や営みを大切にして、引き続き皆さんと支え合いながらまちづくりに取り組んでいきたいと思っています」(金城氏)

全国エリアマネジメントネットワーク副会長/一般社団法人大手町丸の有楽町地区まちづくり協議会事務局長  金城 敦彦氏

2023年9月4日、全国エリアマネジメントシンポジウム2023を福岡・天神にて開催しました。今回は「これからの“まちなか”における文化・クリエイティビティを考える」をテーマに、福岡を拠点にあらゆる分野で活躍されるステークホルダーの方に登壇いただき、議論を交わしていただきました。

文化・クリエイティブを切り口に二部構成で、多様なトピックが展開した3時間に渡る内容を、【開催レポート_その1】と【開催レポート_その2】に分けてレポートします。

 

冒頭にWe Love天神協議会事務局長の荒牧正道氏、国土交通省 都市局まちづくり推進課 官民連携推進室企画 専門官の乃口智栄氏より開会のご挨拶をいただきました。

We Love天神協議会 事務局長 荒牧正道氏

「コロナが5類に移行して、皆さんの活動も活発に動き始めていると思います。福岡市中心部では『天神ビッグバン』『博多コネクティッド』といった大規模開発の真っただ中にあり、街の新たな変化に向けて今は力を蓄える時期だと思って取り組んでいます。
今回のテーマである『文化・クリエイティブ』をどう街に実装させるかにつきましても、まさに今議論すべき重要なテーマです。やはり街に出て気づきを得たり、何か自分をアップデートするものに出会うことが街の魅力につながりますので、皆さまとともに考えをより深めたいと思っています」(荒牧氏)

国土交通省 都市局まちづくり推進課 官民連携推進室企画 専門官 乃口智栄氏

「国土交通省では8月に来年度の予算要求方針を発表しまして、都市局の取り組みとしてはグリーンや子育て支援のまちづくり、地方都市の再生を重点な柱として新たに掲げております。 本日のテーマである文化やクリエイティブは、地方都市の再生に欠かせない要素の一つですので、皆さんのご意見や議論を今後の施策検討に繋げていきたいと考えています。また、エリマネに関しては、 その活動や空間の評価を新しい指標で考えていく取り組みも行っておりますので、引き続き全国エリアマネジメントネットワークの皆さまとともに検討させていただきたく考えています」(乃口氏)

 

SESSION1:街の個性をつくりだす創造的・文化的アクティビティ
           【福岡で活動する多様な領域の方々によるクロストーク】

続いて、トークセッションへと移ります。第一部のセッションでは、「街の個性をつくりだす創造的・文化的アクティビティ」をテーマに、音楽やアート、工芸、福祉等、福岡で活動する多様な担い手の方々にお集まりいただき、その活動内容や福岡に対する課題感と可能性について語っていただきました。

最初にコーディネーターである、株式会社大央 代表取締役社長、福岡建築ファウンデーション 理事長の松岡恭子氏より投げかけがなされました。

株式会社大央 代表取締役社長、福岡建築ファウンデーション 理事長 松岡恭子氏

「先日久しぶりにニューヨークとシカゴへ行きまして、街の様相が非常に変わったと感じました。例えば、ニューヨーク市にあるハイラインは、廃虚だった高架鉄道が公園へと生まれ変わった場所ですが、公園を作ったことで人が訪れるようになり、周辺に高級コンドミニアムやオフィス、ミュージアムが集まってきています。一見経済的合理性の乏しい公園が、文化芸術の力を巻き込んでお金を生み出す場所になっているんです。文化的なものをどう街に根付かせるかという点は今後のエリマネにおいて非常に重要なテーマですので、皆さんの取り組みやお考えを伺ってヒントを得たいと思います」

続いて、各登壇者の方より現在の活動について紹介いただきました。

<登壇者>
深町健二郎氏|音楽プロデューサー、ミュージックマンス福岡 総合プロデューサー
中村弘峰氏|中村人形 四代目人形師
樋口龍二氏|NPO法人まる 代表理事、株式会社ふくしごと 取締役副社長
西高辻信宏氏|太宰府天満宮 宮司
ニック・サーズ氏|有限会社フクオカ・ナウ 代表取締役

 

●深町健二郎氏|音楽プロデューサー、ミュージックマンス福岡 総合プロデューサー

音楽プロデューサーの深町健二郎氏は、福岡の5つの音楽イベントが集結した「Fukuoka Music Month」のプロデュースや福岡を日本・アジアを代表する音楽都市にすることを目標とした「福岡音楽都市協議会」の立ち上げなど、音楽を関連産業の振興だけでなく、観光や教育、まちづくりといった場面で活用する取り組みをされています。

そのきっかけには、9月の毎週末にさまざまな主催者が音楽のフェスを開催していたことにあると話します。

「さまざまな主催者がそれぞれに音楽イベントを開催しているのを見て、音楽というのはひとつの重要な福岡らしさだと気が付いたんです。福岡の人は祭り好きな気質もありますね。それで各イベントに横串しを刺してみたらこの福岡という都市が国内外に対して音楽都市としてPRできるんじゃないかと考えました」(深町氏)

そうして10年ほど前から『Fukuoka Music Month』として称して、5つの音楽イベントを集結させたものとして開催。活動を続ける中で、世界の多数ある音楽都市が一堂に集まるコンベンションである国際会議へ、福岡に参加オファーの声がかかるほどになりました。

「世界には名だたる音楽都市がありますが、まさに世界中では音楽がいろいろな場面で活用されていることを知りました。『福岡音楽都市協議会』を立ち上げたのはそれがきっかけで、福岡も音楽を活用したことができるんじゃないかと考えて取り組みを広げています」(深町氏)

 

●中村弘峰氏|中村人形 四代目人形師

中村弘峰氏は、博多人形を作る中村人形 四代目人形師として活動されています。事業は100年以上の歴史を持ち、福岡で7月に開催される伝統的なお祭り「博多祇園山笠」では、山車に乗せる人形の制作も手掛けています。代々受け継がれる仕事がベースにありながらも、伝統工芸をアートとしてどう未来に残すか、という想いがあるようです。

「これまで工芸作家にとって百貨店が主戦場で、まちづくりの中でも百貨店は主要な位置付けを持ってきたと思いますが、客足が減ってきていて、地方の百貨店なんかはだんだん潰れてしまったりと状況が変わってきています。そういった危機感もありつつ、SNSを通じてお客様から直接お問い合わせがあることも増え、百貨店だけでなくコマーシャルギャラリーでも展示をおこなったり今年から自分でもギャラリーを構えるようになりました。そうした背中を示すことで、他の工芸作家やアーティストの参考になればいいなっていう気持ちもあります」(中村氏)

 

●樋口龍二氏|NPO法人まる 代表理事、株式会社ふくしごと 取締役副社長

樋口龍二氏は、2007年に障害者支援施設を運営するNPO法人まるを設立し、その後「FACT(福岡県障がい者芸術文化活動支援センター)を立ち上げ、福岡を中心に障害のある人たちの表現を社会にアウトプットする企画運営や、表現活動をサポートする人材育成を各地で開催しています。

現在の活動に至った背景に、障害のある人たちと初めて出会った時になぜ施設の中だけに固まっているのだろうと疑問を抱いたことがあると話します。

「現在障害のある人は1,000万人近くいて、本来であれば皆さんと働いたり暮らしたり、 いろいろな場を共有するということがもっと身近にあるはずなんです。多様性という言葉がよく使われますが、彼らがいる社会を当たり前に作っていかなくていけない。分断を生んでいる社会の方に障害があると思って活動に取り組んでいます」(樋口氏)

そのために福祉の分野にとどまらずに他分野の方とともに繋がりながら、社会にアプローチすることが大事だと話します。

「我々は別に福祉を変えようとは思ってなくて、福岡という街を変えていきたいんです。行政の福祉課の方たちにも、障害者、高齢者、子育てなど範囲を限定するのではなく、社会全体を見据えた考え方で取り組んでもらうよう話しています。

弱い立場の人が暮らしやすい街は、僕らも暮らしやすい街だと思っているので、そういった社会を実現できるよう徐々に発展させたいと思っています」(樋口氏)

 

●西高辻信宏氏|太宰府天満宮 宮司

西高辻信宏氏は、太宰府天満宮の権宮司を務められており、現在124年ぶりの御本殿の大改修を進められている他、継承者不在の古民家のホテルへの改装、太宰府天満宮でのアートプログラムの開催等、長い歴史を積み重ねてきた街の拠点として幅広い取り組みを展開されています。

文化的な取り組みの始まりは、明治に入った頃に実施した『太宰府博覧会』に遡ります。当時神社のものはほぼ非公開だったところを一般に公開して知識を示すことを目的としたもので、世界で博覧会の潮流を受けて、日本でも初期に行われました。そうした取り組みを経て、文化が御祭神と非常に親和性が高く、まちづくりの中でも大事だという意識が歴代宮司に受け継がれているそうです。

「2006年から『太宰府天満宮アートプログラム』という現代アートのプロジェクトを行っており、アーティストの方のオリジナル作品を、境内の中に点在させて境内全体を博物館とするといったものです。作品とともに境内を広く歩いて楽しんでいただくような工夫を施しています。アートの非常にいいところは、国内外の多様な方と関わることができるということで、そうしたご縁をいただいた方と時間をかけて関係性を深め、共同作業をしながら日々取り組んでいます」(西高辻氏)

こうした境内を広く楽しんでもらう仕掛けを展開しながら、次の課題として神社を日常的に訪れる場所にするということがあるようです。

「すでにあるものの歴史を紐解いて、光の当て方を変えることによって、違う展示の仕方をするなど検討しています。今ある資源をどう継承してどのように活かすのか考えて、神社づくり、まちづくりに取り組む必要があると思っています」(西高辻氏)

 

●ニック・サーズ氏|有限会社フクオカ・ナウ 代表取締役

ニック・サーズ氏は30年以上前に来日して福岡に住み始め、1998年にインターナショナルメディア「Fukuoka Now」を立ち上げ、2021年からライブ動画配信サービス「Kyushu Live」をスタートさせています。こうした発信は多言語で展開されており、メディアを通して福岡への移住者も引き寄せているようです。長く福岡を見てきたニック氏が考える福岡の魅力を語ってくださいました。

「福岡はスケールがそこまで大きくなく歩きやすいので、インバウンド旅行客にとっても快適な街です。また、音楽やアートが屋外空間に充実していて外にいるだけで楽しめることも特徴だと思います。再開発を通して期待している変化としては、建物の上層階や屋上にパブリックスペースができてほしいですね。上からの景色をみんなのものにするということは大事だと思います」(ニック氏)

屋外空間や景色をいかに誰もが楽しめるようにするか。こうした考えは、ニック氏が配信する動画コンテンツでも、ローカルな日常的風景が反響が大きいという点があるようです。今人々はどういったことに関心があり、何を求めているのか、エリマネに取り組む上でもそういった点を捉えることは重要になると投げかけました。

その後はフリーディスカッションへ。松岡氏からの投げかけを受けて、登壇者同士で議論を深め合います。

 

松岡 今日のお話を伺って改めて感じたことは、時間、場所、人の繋がりがエリマネの充実に繋がっていくのではということです。

時間というのは、この先も残るハードをどう使い続けるか、時間の蓄積の先に何があるのかを考えることがエリマネの目標のように思います。次に場所は、エリマネには必ず物理的な場所が必要になりますが、何かを行う場とはどうあるべきかを皆さんと考えたいです。最後に人の繋がりというのは、一過性のものではなく、人間一人一人の生活の中に溶け込むような、なだらかな動きみたいなものを作って人を繋ぐことが必要なんじゃないかということです。この3つをキーワードに皆さんのお話をもう少し伺いたいと思います。

 

深町 開発において公開空地を作ることが条件のようになっていますが、ただ作ってもどういった活用をするか前提にいないと機能しないので工夫が必要です。他方で、福岡には街を象徴するランドマークが意外となかったので、そこを逆手に取れるのではと考えています。

例えば、すでに音楽都市協議会の取り組みとして、市内7ヶ所程度をストリートライブができる場所を認定していますが、日本はどの街でも許可されている場所が少ないので、環境を作れば音楽都市としてのひとつの象徴になり得るかもしれません。

経済的合理性でまちづくりをするとやはりコモディティ化が起きてしまうので、その街の個性を大事にしようと思ったら文化しかないんです。文化でどれだけその街を表せるのかがポイントかと思います。

 

松岡 警察や自治体とうまく協働体制を作ることがまずは必要になりますが、その間に入る立場としてエリマネ団体の役割が重要になりそうですね。

樋口さんも行政や障害のある方を媒介する立場で活動されていらっしゃいますが、中間体としてのエリマネ団体に対する課題感や期待はございますか?

 

樋口 イベントや施設など、街で盛り上がっている場所はある一定数の行ける人だけで成り立っている傾向にあり、障害のある人も不自由なく楽しめることも考える必要があると思います。少数とされる障害のある人のニーズにまでリソースが回らないという課題もあると思いますが、行政が予算化して対応すればいいという話でもないんです。トップダウンで事務的に対応するのではなく、そうしたニーズに応えることが企業や団体にとってもメリットになっているべきで、そこを解決するアイデアが絶対あるはずなんです。

ただ、現状はやはり障害のある人との接点が乏しいので、そうした人がコミットしていける社会構造を、まずエリマネから働きかけていくべきではないでしょうか。時間はかかると思いますが、地域として取り組むべき課題だと思っています。

 

松岡 障害のある人も含めた日常のクオリティをどう作っていくか考えなければいけませんね。

西高辻さんは、太宰府天満宮である種エリマネ的な取り組みをすでにされていらっしゃいますがいかがでしょうか。

 

西高辻 日常や恒常的な話でいくと、太宰府天満宮では季節を非常に大事にしてまして、お祭りは多くありますが、歳時的なものが少ないんです。そこを新たに打ち出せると、非日常以外の魅力として伝わっていくのではないかと考えています。

また、文化を消費するのではなく、どう生み出すか考えることも重要なテーマにあると思います。その点において中村くんが提唱されていることはとても面白いですよね。

 

中村 ありがとうございます、福岡の「2時5時問題」ですね。これはつまり、福岡って2時から5時の間やることがないんです。県外から友人が遊びに来た際も、昼食と夜飲みにいく場所だけ決まっていて、その間に何をするか非常に悩むんですね。この課題は福岡の方は共感してくださると思いますが、解決方法を考えてみまして。自分がやっているお店やサービスを「ここでは◯◯分、時間を潰せます」と定義してみる、というものです。

例えば、「中村人形のギャラリーは15分、時間を潰せます」といった形で時間を設定して、非飲食系サービスで2時から5時の3時間を繋げる仕組みを作るんです。特に観光に来る人はできるだけ多くの場所を回りたいので、短めに時間を提示しておいて、「いざ回ったけど時間が足りなかったから次は2泊で来よう」と思ってもらうことも狙いです。

シンプルなアイデアですが、みんなで3時間を繋ぐということはいろいろな解決につながると思っています。

 

松岡 福岡には音楽やアート作品が街中にたくさんありますが、情報としてアーカイブされていないのでそこを充実させることは大事ですね。

 

中村 みんなで時間を繋ぐということで言うと、今まで街のプレイヤーとなる人たちのレイヤーが分野や世代で分かれ過ぎていて、全然混ざってなかったんですよね。そういった課題感もあり、かつてあった素晴らしい活動を当事者の方にお話しいただく「FACT/Fukuoka Art Culture Talk 」というトークイベントを実施したのですが、街で起きたことを蓄積することを目的に、トークの内容はすべて記録して誰でもアクセスできるようにしています。そうすることは、長い目で見たら後世にも残る街の財産になると思っています。

 

ニック 将来のためのことを考える場に、若い方を巻き込むことは大事ですね。今日も若い方が少ないですが、どういった人とともに考えていくかも重要な気がします。

 

松岡 そうですね。皆さんそれぞれ長く活動されて蓄積があるものの、意外と横が繋がっていないという驚きがありましたが、そこが一つの課題であると思いました。そこに対してエリマネは何ができるかというと、継続的かつ長期的に議論や計画する場を作ることなんじゃないでしょうか。年次の報告だけでなく、5年、10年の蓄積が何を生んだのかを振り返り、検証することも必要です。姿勢としては、今ここに石を積み上げつつ、なるべく遠くにも石を投げておく、ということが求められるのではないかと思います。

 

▷▷▷ 【開催レポート_その2】に続きます。

2023年9月4日、全国エリアマネジメントネットワークの第7期の活動振り返りと、第8期の活動方針を発表する総会を開催しました。今回は福岡を会場に、リアルとオンラインでのハイブリット開催とし、多くの会員の皆さまにご参加いただきました。
また、今回の総会では2021年に発足した若手実務者会議AMU35の活動についても報告を実施。報告がなされた主な内容をレポートいたします。

 

第7期事業報告

前半は、第7期の主な活動と現在の状況について報告を行いました。
総括としては「ナイトタイムエコノミー研究会発足」、「実務的なテーマでのエリマネウェビナー開催」、「エリアマネジメント研究交流会開催」、「人材育成プログラムの実施」が主な活動となりました。それぞれの詳細は以下の通りです。

活動の総括
(1)「ナイトタイムエコノミー研究会」発足

「都市にダイバーシティ&インクルージョンを 〜ナイトタイムエコノミーとエリアマネジメント〜」をテーマに、札幌にて全国エリアマネジメントネットワークシンポジウムを開催し、その後さらに研究・議論を深めるべく、「ナイトタイムエコノミー研究会」を発足しました。研究会・コミュニティ活動としては、すでに活動している「スマートシティ・DX研究会」「グリーン×エリアマネジメント研究会」に続く新たなテーマ。ナイトタイムにおける規制緩和等のルールメイキングや都市のストック活用策などさまざまな切り口で議論を進めています。今後の展開としては、研究会を公開形式で開催することで、より発展的な議論の創出を検討しています。

(2)実務的なテーマでのエリマネウェビナー開催

「ランチタイムラーニング」と称し、エリアマネジメントの展開を支える技術やシステム、サービスを学ぶプログラムを継続して開催。第7期では、SIB(Social Impact Bond)等の新たな財源の可能性について行ったアンケート調査の結果報告や大阪・梅田地区で開始した「地域再生エリアマネジメント負担金制度」の紹介を行うなど、より実務面でのヒントとなるような企画を実施しました。

(3)エリアマネジメント研究交流会開催

第3回の開催となった今年は、第1回が14件、第2回が9件といった発表数に対して、21件と大幅に増加。京橋にある「シティラボ東京」を会場に初めて対面での開催となり、研究者や実践者の交流の場を創出しました。

(4)人材育成プログラムの実施

エリアマネジメント実務者向け研修プログラム「プレイスメイキング講座」や若手実務者会議「AMU35」を継続的に開催し、若手同士の議論や交流機会の充実化を図りました。プレイスメイキング講座では、3名の専門家を講師に招き大丸有地区にて実施し、2日間に渡るフィールドワークやディスカッションを通して多くの方々がプレイスメイキングへの考えや学びを深めました。

その他では、国土交通省と共催のシンポジウム「官民連携まちづくりDay」にて「経済とまちづくり」をテーマにした議論や渋谷エリアマネジメント開催のイベント協力等を実施。
一方で、当初の計画していたより包括的な人材育成プログラムの実施やアンケート等のリサーチ関係も着手に至らなかったため、この点は第8期に引き継ぐこととしました。

 

第8期事業計画

続いて第8期事業計画について、全国エリアマネジメントネットワークの活動方針である「交わる/広める/深める/支える」を軸にした具体的な活動内容の説明を行いました。

第8期の主な活動内容

第8期は「エリアマネジメントの領域展開と実務能力向上に向けて」をコンセプトとして以下の活動を計画しています。

  •  ワークライフスタイルの変化に応じた、今後の社会・都市におけるエリアマネジメントの役割の再考と発信
  •  各研究会やAMU35などのコミュニティ活動の推進を通じた、エリアマネジメントの実務者育成および更なるネットワーク構築
  •  日本各地のエリアマネジメント組織をつなぐ中間支援組織として、今後本ネットワークをどのようにバージョンアップさせていくべきか検討
  •  エリアマネジメントに関するリサーチや理論化、各地のエリマネ組織へのフィードバックの実施とともに、行政との対話の充実化の図り、エリアマネジメントの活動の基盤を構築
  •  アメリカのIDA(International Downtown Association)との継続的な連携推進、海外諸国でのBID等の情報収集やアジア都市との連携活動の展開

これらを方針とし、特に注力したい事業内容について説明を行いました。

(1)情報交換・連携【交わる】

国土交通省との連携による「官民連携まちづくりDay」の開催や、ニュースレター発行を通して、ネットワーク会員間の情報交換・議論の機会を創出します。
また、海外の各組織とリアルで交流できる状態になってきたことを受け、アメリカのIDAとの連携について対話を進めていく予定です。アジアに関しては、BID(Business Improvement District)が法制化するシンガポールとの連携に今後注力していきます。

(2)パブリックリレーション【広める】

期に一度の総会と合わせたシンポジウムの開催と、イベントレポートの作成や配信、ウェブサイトの英語対応等の広報を強化していきます。

(3)エリアマネジメント活動の新たな展開の議論【深める】

前述の3つの研究会の活動を継続しながら、地方都市のエリアマネジメントコミュニティの立ち上げを目指します。また、研究会の議論の一般公開や普及活動も関係団体と連携しながら進めていく予定です。
また、各所で議論を進める中で、行政との連携・対話の重要性が意見として挙がっていることを受け、エリアマネジメントの実務者と行政がリアルな場で議論をするエリマネサロンの開催を検討しています。

(4)エリマネ関連リサーチ【深める】

第7期で着手に至らなかったエリアマネジメント関連のリサーチを進めていくためにリサーチチームを組成し、本ネットワークにおけるリサーチ事業の実施・監修を行います。
アンケートに関しては、新たな試みとして研究者との共同研究の募集を行い、調査の深化を図ります。

(5)ノウハウ蓄積・人材育成【支える】

AMU35やプレイスメイキング講座を引き続き開催し、学びの機会を創出します。人材育成に関しては、幹事会メンバーを中心に実行委員を立ち上げ、エリアマネジメントを支える人材育成プログラムの企画検討、育成事業パイロット版の実施を新たな取り組みとして検討しています。

(6)組織体制に関する検討【支える】

本ネットワーク10期目に向けて、これまでの活動を振り返りながら中間支援組織としての今後のあり方や事務局体制、活動方針を検討していきます。幹事会メンバーを中心に検討の機会をつくり、議論が充実する体制にすべくニーズの洗い出しやコミットを高める工夫を展開していく予定です。

議長 内川副会長(左)、司会 藤井事務局長(中央)、資料説明 長谷川事務局次長(右)

(※本通常総会は、本来議長である小林会長の会場参加が叶わなかったため、定款第21条2項に則し副会長が議長を務めております。)

 

全国エリマネ若手実務者会議AMU35の活動について

続いて、全国エリアマネジメントネットワーク若手実務者会議「AMU35」の活動内容について、幹事メンバーの梅田地区エリアマネジメント実践連絡会の皆川氏、広島駅周辺地区まちづくり協議会の金井氏、一般社団法人日本橋浜町エリアマネジメントの浅野氏から報告いただきました。

今期のAMU35幹事メンバー 金井氏(左)、皆川氏(中央)、浅野氏(右)

 

AMU35の概要

AMU35は、エリアマネジメントに関わる様々なトピックについて若手の実務者が意見を交わし、具体的なアクションを紡いでいくことを目的とした研究会として、2021年6月に発足しました。対象はエリアマネジメント団体に職務として携わっている、かつ35歳以下の本会員とし、 現在は全国から63名が参加しています。

活動内容は、メンバー間のディスカッションや現地視察を中心に行っており、今後は講師を招いた勉強会や就活生・学生といったより若い層へのアプローチする活動を検討しています。

活動実績|2022年9月〜2023年8月

この1年間の具体的な活動実績は以下の通りです。

(1)今後の活動を考える検討会(1回実施)

グループワークを行い、全国エリアマネジメントネットワークの活動方針である「交わる/深める/広める/支える」の4つの観点から、今後AMU35でどのようなことをしていきたいか、何が適切か、アイデアを出し合い議論しました。

(2)メンバーミーティング(オンライン/4回実施)

3ヶ月に一度、各回でインプットトークの担当者を決めて各エリアマネジメント団体の取り組みを紹介いただき、それに関わるディスカッションをすることで情報共有及び意見交換を行いました。この1年では、広島、福岡、福井といった地方都市におけるエリアマネジメント団体の取り組みについても議論の場を設け、メンバーの知見を深めました。

(3)フィールドワーク(オフライン)

2023年7月24、25日の一泊二日、関西エリアにてフィールドワークを開催。1日目は、難波から中之島までの4エリアを視察し、現在工事中の難波駅の広場や道を活用した御堂筋の再整備、中之島の水辺のエリアマネジメントを見学しました。

2日目は神戸の東遊園地のパークマネジメントの活動や中央通りのほこみち、三宮センター街の見学を行い、梅田エリアでは現在工事が進んでいるうめきた2期のPRセンターを訪問。参加メンバーは北海道から広島まで全33名となりました。

 

このように、定期的なメンバーミーティングやフィールドワークの開催を通してコミュニティ形成を図り、その中で若手実務者の悩みや苦労話などを共有しながら、お互いの理解を深めることに注力してきました。

一方で、議論の場で活動について多くのアイデアや意見が出るものの、具体的なアクションは生じていないため、今後は実務への支障をきたさない範囲で活動や交流の機会を広げ、研究会としての意義を高めていくことに取り組んでいきます。

 

全国エリアマネジメントネットワークの活動は年々多岐に渡っていますが、エリアマネジメントの役割もますます多方面で求められていきます。そうした中で、より知見や意見を深め合い、今後の実務へと繋げられるよう、会員の皆さまのご意見を反映しながら研究や交流の場を創出してまいります。

これからの全国エリアマネジメントネットワークの活動にぜひご期待ください。

☞ 総会資料はこちらからダウンロードできます。
全国エリマネ第8回通常総会資料

全国エリアマネジメントネットワーク事務局

沢山の皆様のご尽力のもと、2023年7月1日 会場発表及びオンライン配信にて「エリアマネジメント研究交流会 第3回」を実施致しました。

 

第3回は21件の発表エントリーがありました。
そのため、発表会場とウェビナーを2つに分けての実施となりました。
▷当日のプログラムはこちら


「左側:◇チャンネル2:事例報告」⇐⇐⇐  ⇒⇒⇒「右側:◇チャンネル1:調査報告/研究報告」

 

◇チャンネル1:【セッション1】調査報告 及び 【セッション2】研究報告

各セッション4件(計8件)の発表がありました。



エリアマネジメント活動の評価指標や効果検証、収益の観点からの調査、社会課題への対応など、多様な切り口での報告がありました。
調査と研究という比較的アカデミックなテーマですが、サロン形式での実施だったため、大変柔らかい雰囲気の中で活発な議論・意見交換が行われました。

 

◇チャンネル2:【セッション3】事例報告

全13件の発表がありました。


東京、大阪、仙台、広島、富山、前橋、水戸と、全国各地の多様な事例報告でした。
実行委員長の嘉名先生(大阪公立大学大学院)からは、「苦労話をシェアしていただいたのは研究交流会ならでは」とのお言葉を頂いたとおり、成功例だけではなく課題等のお話しも多く挙げられました。

 

参加者及び視聴者からの意見や感想も多数あり、限られた時間ではありましたが、両会場とも充実した情報意見交換・議論ができたと感じております。

 

アワード受賞者

第3回のアワードは以下の方々が受賞されました。 ※「◎」は発表者

【調査研究部門】
◇社会課題に対応する先進的なBID等の事例調査報告
  ◎深谷麻衣(三菱総合研究所)、 山崎 潤也(東京大学)
     吉田 崇紘(東京大学)、 似内 遼一(東京大学)、 真鍋 陸太郎(東京大学)、 村山 顕人(東京大学)

◇地域特性からみたエリアプラットフォームの組織及び活動の特徴
   ー全国98のエリアプラットフォーム団体の実態整理を踏まえてー
  ◎⼩野寺 瑞穂(⽇本⼤学⼤学院理⼯学研究科・院生)、
     ⼀之瀬 ⼤雅(⽇本⼤学⼤学院理⼯学研究科・院生)、 泉⼭ 塁威(⽇本⼤学理⼯学部 准教授)

【研究報告部門】
◇温熱環境調査・解析と模型制作を組み合わせた気候変動適応まちづくりワークショップ手法
   -名古屋市中区錦二丁目地区における実践を通じて-
  ◎山崎 潤也(東京大学)
     森田 紘圭(錦二丁目エリアマネジメント株式会社)、名畑  恵(錦二丁目エリアマネジメント株式会社)
     似内 遼一(東京大学)、 真鍋 陸太郎(東京大学)、 村山 顕人(東京大学)

◇メインストリートに接する横道における歩行者行動に関する研究 ー大阪難波地区を対象としてー
  ◎神田 佳祐(大阪公立大学院・院生)、
     嘉名 光市(大阪公立大学院)、 高木 悠里(大阪公立大学院)

【事例報告部門】
◇河川施設利活用を通したエリアマネジメント組織による収益事業スキームの構築と展開
  ◎末繁 雄一(一般社団法人ナカメエリアマネジメント/東京都市大学)、
     竹内 幹太郎(株式会社富士通総研)

◇住宅用途主体の再開発エリアにおける永続的なエリアマネジメントの実現に向けた活動~
   一般社団法人小岩駅周辺地区エリアマネジメントを事例として~
  ◎安藤  響(野村不動産株式会社開発企画本部)
  ◎都築 敏行(一般社団法人小岩駅周辺地区エリアマネジメント)
     髙村 和明(株式会社 HITOTOWA)

◇前橋市馬場川通りにおける連鎖発展的社会実験による中心市街地活性化の担い手育成と賑わい創出
  ◎日下田 伸(一般社団法人前橋デザインコミッション/宇都宮大学大学院・院生)
     味戸 正徳(一般社団法人前橋デザインコミッション/宇都宮大学大学院・院生)
     本橋  豊(一般社団法人前橋デザインコミッション)、
     加部 雅之(一般社団法人前橋デザインコミッション)、
     高橋 悠香(一般社団法人前橋デザインコミッション)
     奈良 美里(一般社団法人前橋デザインコミッション)

【ベストプレゼンテーション部門】
◇大学がなかった墨田区とiU大学が取り組んだ「プロジェクトによる学生の成長」
  ◎渡慶次 りさ(iU 情報経営イノベーション専門職大学)


第3回 アワード受賞者の皆様

 

本研究交流会恒例となりました“舗装材トロフィーシリーズ”
第3回目のトロフィーは、大阪 御堂筋よりご提供頂きました舗装材『アンゴラブラック』をのトロフィーです。
受賞者の方々には、御名前とタイトルを記載し、制作後に各受賞者に贈呈されます。(受賞者の皆様は楽しみにお待ちください。)

 

トータル5時間という長丁場ではありましたが、学生の方、学識経験の方から、実践者の方々まで多岐に渡るエリアマネジメントに関わる発表を伺うことができ、大変有意義な会となりました。
参加者の皆様、付き合いいただきました視聴者の皆様、ありがとうございました。

 

「エリアマネジメント研究交流会 第3回」梗概集も作成予定です。完成しましたら本ホームページにもアップ致します。こちらもお楽しみに。

 

▲第3回選考委員▲
○実行委員長:嘉名 光市(大阪公立大学院 教授)
○各セッション担当委員
【調査研究部門】
司会:村山 顕人(東京大学 准教授) サポート:籔谷 祐介(富山大学 講師)
【研究報告部門】
司会:宋 俊煥(山口大学 准教授) サポート:堀 裕典(岡山大学 准教授)
【事例報告部門】
司会:要藤 正任(京都大学 特定教授)/丹羽 由佳理(東京都市大学 准教授)/泉⼭ 塁威(⽇本⼤学理⼯学部 准教授) サポート:上野 美咲(和歌山大学 講師)
○全体司会・運営:全国エリアマネジメントネットワーク事務局

会の実施・運営にご尽力いただきました皆様、ありがとうございます。

”エリアマネジメント研究交流会”開催します!

エリアマネジメント研究交流会の第3回を今年度も開催致します。
「エリアマネジメント研究交流会」は、全国エリアマネジメントネットワーク、UDCネットワークの2者による実行委員会で運営しており、エリアマネジメント研究の深化、すそ野の拡大、研究者と実務者の意見交換・交流の場の提供を目的としています。
本研究交流会では、エリアマネジメントに関する調査、研究や実践について広く発表者を募り、研究者同士、研究者と実務者での議論を通じて、エリアマネジメントの役割や価値・評価、実践知等についての知見を深め、共有していきたいと考えております。

開催日は7月1日

第3回として2023年7月1日(土)に開催することと致しました。5月より発表者の募集を行いますので奮ってご参加ください。本研究交流会は、出来るだけ多くの発表が行われるよう厳格な審査等は行いません。また、一定の結論や独創性、先駆性を求めるものでもありません。着手したばかりの調査、研究でも広く受け付けますので、よろしくお願いいたします。
※開催方式につきましては、「発表者及び実行委員会のみ会場参加にてオンライン配信」を想定しております。

 

▼研究会に関する詳細及び研究交流会へのエントリーについては、下記資料をダウンロードください。▼
☛ ダウンロード 【ご案内】エリアマネジメント研究交流会第3回について

☛ ダウンロード 【ES】エリアマネジメント研究交流会第3回_エントリーシート

 

研究交流会 第2回について

昨年、2022年7月2日に第2回を開催した研究交流会では9件の発表がありました。
第2回のアワード受賞者については以下のページをご確認ください。 第2回の梗概集もダウンロード頂けます。

開催後記 エリアマネジメント研究交流会 第2回

 

エリアマネジメント研究交流会について

研究交流会にエントリーされる方は、下記をご確認ください。

 

沢山の皆様のご尽力のもと、2022年7月2日 オンライン開催にて「エリアマネジメント研究交流会 第2回」を実施致しました。

9件の発表をもって、第2回の発表会が終了致しました。
長丁場に付き合いいただきました78名の視聴者の皆様、ありがとうございました。
学識の方々の発表から、実践者の方々まで多岐に渡るエリアマネジメントに関わる皆様の発表を伺うことができ、大変有意義な会となりました。
ご尽力いただきました皆様、ありがとうございます。

 

アワード受賞者

第2回のアワードは以下の方々が受賞されました。

【調査研究部門】
◇地方小都市におけるエリアマネジメントの持続性に関する考察
-奈良県桜井駅周辺エリアマネジメントにおける人材・財源の確保に着目して-
◎高木 悠里(大阪公立大学大学院工学研究科)、嘉名 光市(大阪公立大学大学院工学研究科)

【研究報告部門】
◇エリアマネジメント団体による「エリアビジョン」の策定プロセス及び将来像実現に向けた取り組みの傾向
-全国35エリアビジョンの分析-
◎一之瀬 大雅(日本大学大学院理工学研究科・院生)、 藤田  涼平(横浜市住宅供給公社)
泉山  塁威(日本大学理工学部建築学科)、宇於﨑 勝也 (日本大学理工学部建築学科)

【事例報告部門】
◇「地権者リスト」と「あきんどリスト」で商店街は商人街へと
◎片山 進平(協同組合中之町商店会)

【ベストプレゼンテーション部門】
◇温熱環境シミュレーションを活用した気候変動適応まちづくりワークショップの方法
-名古屋市中区錦二丁目地区における実践を通じて-
◎山崎 潤也(東京大学)、似内 遼一(東京大学)、真鍋 陸太郎(東京大学)、村山 顕人(東京大学)

 

受賞者の方々には、御名前とタイトルを記載したトロフィーを贈呈しました。
第2回目のトロフィーも、第1回と同じく大丸有中通の舗装財でおなじみ『アルゼンチン斑岩トロフィー』でした。

「エリアマネジメント研究交流会 第2回」梗概集 作成しました
下記よりダウンロードください。(※ファイル容量が大きいためダウンロード時はご注意ください)
☞ ダウンロード 【梗概集2022】エリアマネジメント研究交流会_第2回

 

 

 

▲第2回選考委員▲
○実行委員長:嘉名 光市(大阪公立大学 教授)
○各セッション担当委員
【調査研究部門】
司会:村山 顕人(東京大学 准教授) サポート:丹羽 由佳理(東京都市大学 准教授)
【研究報告部門】
司会:籔谷 祐介(富山大学 講師) サポート:宋 俊煥(山口大学 准教授)
【事例報告部門】
司会:要藤 正任(京都大学 特定教授) サポート:サポート:三牧 浩也(UDCネットワーク)
○上記役割外審査会参加実行委員:
上野 美咲(和歌山大学 講師)/堀 裕典(岡山大学 准教授)
○全体司会・運営:全国エリアマネジメントネットワーク事務局

都市にダイバーシティ&インクルージョンを
〜ナイトタイムエコノミーとエリアマネジメント〜

 ここ数年Covid-19によって大きな変化を余儀なくされた都心地区であるが、行動制限も徐々に緩和され、都心地区の活動を如何に再起動していくのか、経済再生を進めていくかが問われている。
 Covid-19を経験し、これまで以上に多様な働き方、暮らし方を意識して、それを受け止める都市活動を展開していくことが求められている。また、今後の経済再生を図っていくためには、これまでの延長線上ではないイノベーションを如何に起こしていくかが問われている。つまり、社会の多様性や包摂性を如何に高めていくかが重要となってくる。
 この多様性や包摂性を考えていく上で、多様な人々を街に呼び込み、交流を促進するナイトタイムエコノミーがある。ナイトタイムエコノミーもCovid-19によって大きな打撃を受けた領域であるが、都心地区の活動の再起動及び多様性、包摂性を生み出す存在としてナイトタイムエコノミーがあるのでは無いかと考える。
 本年のシンポジウムでは、“ナイトタイムエコノミー”をキーワードに、エリアマネジメントというエリアベースの取組みによってエリアの多様性や包摂性を高め、多様な経済活動、イノベーションが起こっていく環境を如何に創造していけるのかを考える。

 

◆全国エリアマネジメントシンポジウム 2022 開催概要◆

日  時:2022年9月8日(木) 15:00 – 18:10
開催形式:オンライン開催(zoom webinar) ※登壇者及び一部関係者は現地参加
参  加  費:2,000円(会員は割引あり)
申込方法:Peatixのみ。 ⇒https://amn-sympo-nespk.peatix.com
            ※後段の注意事項及びPeatix内の説明も必ずお読みください。
申込締切:2022年9月8日(木)14:00まで(当日、開始1時間前まで購入可能。)
主  催:全国エリアマネジメントネットワーク
共  催:京都大学経営管理大学院官民協働まちづくり実践講座
     一般社団法人ナイトタイムエコノミー推進協議会 (https://j-nea.org/)

 

◆プログラム◆
15:00 – 15:10  開会 主催者挨拶・ゲスト挨拶

15:10 – 15:40  プレゼンテーション①:これからのナイトタイムエコノミー。夜から街をひらいていく
         ナイトタイムエコノミー推進協議会 代表理事/Field-R法律事務所 弁護士 齋藤 貴弘 氏

15:40~16:10  プレゼンテーション②:夜の可能性とまちづくり~エリアマネジメントの役割~
         ナイトタイムエコノミー推進協議会/森ビル株式会社 伊藤 佳菜 氏

16:10~16:30  「夜」に関わる各地域のまちづくり活動事例の紹介
         Case-1. 博多・天神の事例紹介
         博多まちづくり推進協議会 郷原 裕季 氏
         We Love天神協議会 荒牧 正道 氏
         Case-2. 大丸有の事例
         三菱地所株式会社/NPO法人 大丸有エリアマネジメント協会 森  晃子 氏

16:30~16:40  休憩

16:40~18:00  ナイトタイムエコノミーと都市の多様性
           モデレーター:
         A.T.カーニー日本法人会長/CIC Japan 会長/ナイトタイムエコノミー推進協議会 理事
                                             梅澤 高明 氏

         パネリスト:
         ナイトタイムエコノミー推進協議会 代表理事/Field-R法律事務所 弁護士 齋藤 貴弘 氏
         ナイトタイムエコノミー推進協議会/森ビル株式会社 伊藤 佳菜 氏
         クリプトン・フューチャー・メディア株式会社 服部 亮太 氏
         札幌駅前通まちづくり株式会社 今村 育子 氏
         全国エリアマネジメントネットワーク事務局 長谷川 隆三

18:00~18:10  閉会挨拶

 

▼ご案内は以下をダウンロードください▼
【ご案内】全国エリアマネジメントシンポジウム2022

 

◆登壇者プロフィール◆


◆注意事項_必ずご確認ください◆
1. チケット購入とzoom視聴URLの取得方法について
===要事前登録!Peatixの購入だけではzoom試聴URLは取得できません。===
チケット購入後、Peatixより「ウェビナー登録」URLが配信されます。
登録をしないと、視聴URLは届きませんので、必ずお手続きください。

【「全国エリアマネジメントシンポジウム2022」ウェビナー参加URL取得方法】
❶. Peatixにてチケットを購入後、「チケットお申し込み詳細」というメール(tickets@peatix.comより)届きます。
❷. メールに記載の「イベント試聴ページ」に移動をクリック。
❸. 「イベントに参加」をクリックするか、【主催者からのお知らせ】に記載の「このウェビナーに事前登録する」のURLをクリック。
❹. zoom「ウェビナー登録画面」に進みますので、必要事項を入力し、「登録」をクリック。
❺. zoomから試聴URLが届きます。

2. オンライン参加について
・操作方法等は、事前にご自身でご確認ください。
・配信内容の録画/録音、無断で複製、転載、改変、配布、販売することは固く禁止します。
・配信用URLのSNS等への投稿、他人へのシェアによる拡散はご遠慮ください
(専用URLとなりますので、他者との共有はご遠慮ください)。
・ウェビナー開催時は、アクセスが集中するとスムーズに視聴出来ない場合がございます。接続が不安定な場合は一度ログアウトをし、時間をおいてから再度アクセス頂くと繋がり安くなり場合がありますのでお試しください。
・配信側のネットワークが不安定な場合には、画像や音声の乱れ、映像の停止などのトラブルが発生する場合があります。早期の復旧に努めますが、場合によっては配信を一時停止する場合や再度接続し直して頂く場合などがあります。予めご了承ください。

 

◆問い合わせ◆
全国エリアマネジメント ネットワーク事務局
株式会社フロントヤード 担当:長谷川・関口
E-mail:info●fyard.co.jp (※送信時は●を@に変える)

※「Peatix」及び「zoom」のご登録・操作方法等に関するご質問はお受けできません。ヘルプ等をご参照の上、ご自身で確認ください。

今年も”エリアマネジメント研究交流会”開催します!

全国エリアマネジメントネットワーク、公益社団法人日本都市計画学会エリアマネジメント人材育成研究会、UDCネットワークの3者による実行委員会で運営しており、エリアマネジメント研究の深化、すそ野の拡大、研究者と実務者の意見交換・交流の場の提供を目的として立ち上げた「エリアマネジメント研究交流会」。
本研究交流会では、エリアマネジメントに関する調査、研究や実践について広く発表者を募り、研究者同士、研究者と実務者での議論を通じて、エリアマネジメントの役割や価値・評価、実践知等についての知見を深め、共有していきたいと考えております。

今年は7月2日開催です。

第2回となる本年は、7月2日(土)に開催致します。5月9日より発表者のエントリーを開始致します。本研究交流会は、出来るだけ多くの発表が行われるよう、厳格な審査等は行いません。また、一定の結論や独創性、先駆性を求めるものでもありません。着手したばかりの調査、研究でも広く受け付けますので、多数のエントリーをお待ちしております。
※開催方式は完全オンラインか発表者のみ会場参加とするかを検討中、確定次第お知らせします。

▼研究会に関する詳細及び研究交流会へのエントリーについては、下記資料をダウンロードください。▼
 ☛ ダウンロード 【ご案内】エリアマネジメント研究交流会第2回について
 ☛ ダウンロード 【ES】エリアマネジメント研究交流会第2回_エントリーシート

 

研究交流会 第1回について

昨年7月10日に第1回を開催した研究交流会では15件のエントリー、内14件の発表がありました。第1回のアワード受賞者については以下のページをご確認ください。 第1回の梗概集もダウンロード頂けます。

開催後記 エリアマネジメント研究交流会 第1回

 

エリアマネジメント研究交流会について

研究交流会にエントリーされる方は、下記をご確認ください。

※本研究交流会は前述の3者によって構成する「エリアマネジメント研究交流会実行委員会(以下、実行委員会)」によって運営します。

沢山の皆様のご尽力のもと、2021年7月10日 オンライン開催にて「エリアマネジメント研究交流会 第1回」を実施致しました。

15件の応募、内14件の発表をもって、第1回の発表会が終了致しました。
5時間30分にも及ぶ長丁場に付き合いいただきました皆様、ありがとうございました。
学識の方々の発表から、実践者の方々まで多岐に渡るエリアマネジメントに関わる皆様の発表を伺うことができ、大変有意義な会となりました。
ご尽力いただきました皆様、ありがとうございます。

アワード受賞者
第1回のアワードは以下の方々が受賞されました。

【調査研究部門】
◇景観マネジメントの担い手としてのエリアマネジメント団体の可能性
-エリアマネジメント団体による景観形成に関するルールの策定状況とその運用実態に着目して-
◎高木悠里、嘉名光市、蕭閎偉
【実践報告部門】
◇エリアマネジメント組織による街区公園のミニ改修
◎宇山穂、天野佑介
◇エコディストリクト研究会の活動報告
◎久保夏樹、村山顕人、真鍋陸太郎、山崎潤也、深谷麻衣、日下田伸、諸隈紅花、堤遼、小松航樹
◇横浜市金沢シーサイドタウンにおける活性化の取り組み 「あしたタウンプロジェクト」
-既成住宅市街地におけるエリアマネジメント体制構築の要点と課題-
◎中西正彦、三輪律江、太田祐輔
【ベストプレゼンテーション部門】
◇「まちからベンチ」と「インターネットシェアスペースサービス」を通じたまちづくりにおける
狭小空間の柔軟な利用について
◎西山徹

受賞者の方々には、御名前とタイトルを記載したトロフィーを贈呈しました。
記念すべき第1回目のトロフィーは、大丸有中通の舗装財でおなじみ『アルゼンチン斑岩トロフィー』でした。

「エリアマネジメント研究交流会 第1回」梗概集 作成しました
下記よりダウンロードください。(※ファイル容量が大きいためダウンロード時はご注意ください)
☞ ダウンロード 【梗概集2021】エリアマネジメント研究交流会_第1回

 

▲第1回選考委員▲
○実行委員長:嘉名 光市(大阪市立大学 教授)
○各セッション担当委員
【セッション1 調査・研究報告】
司会:村山 顕人(東京大学 准教授)サポート:丹羽 由佳理(東京都市大学 准教授)
【セッション2 事例報告_ Group 1:空間活用】
司会:野原  卓(横浜国立大学 准教授)サポート:三牧 浩也(UDCネットワーク)
【セッション3 事例報告_ Group 2:計画・ビジョン形成】
司会:籔谷 祐介(富山大学 講師)サポート:宋 俊煥(山口大学 准教授)
【セッション4 事例報告_ Group 3:コミュニティ形成】
司会:要藤 正任(京都大学 特定教授) サポート:上野 美咲(和歌山大学 講師)
○上記役割外審査会参加実行委員:
堀 裕典(岡山大学 准教授)/保井 美樹(全国エリアマネジメントネットワーク副会長/法政大学 教授)
○全体司会・運営:全国エリアマネジメントネットワーク事務局

2021年9月17日(金)、全国エリアマネジメントシンポジウム2021が開催されました。

今なお世界中のあらゆる産業に甚大な打撃を与えている新型コロナウイルス感染症。エリアマネジメントの領域も例外ではなく大きな影響を受けており、まちづくりやコミュニティに対するアプローチの見直しが求められています。

エリアマネジメントのあり方が大きな転換期を迎える中、本年のシンポジウムはSDGsにも大きく関わってくる「グリーン」「コミュニティ」「クリエイティビティ」の3つをキーワードに掲げて開催。各キーワードをエリアマネジメントに落し込んでいくには何が必要になるのか、そしてafterコロナ/withコロナ時代のエリアマネジメントはどのような姿になっていくのかといったことを、有識者の皆さまのプレゼンテーションやトークセッションから探っていきました。当日の要旨をレポートします。

なお本シンポジウムは感染状況を考慮してオンラインでの開催となりました。


パンデミック下における国内と北米のエリマネ組織の動向変化

冒頭、国土交通省都市局局長の宇野善昌氏より開会のご挨拶をいただきました。

国土交通省都市局局長の宇野善昌氏

 

「様々な要因で社会情勢が大きく変化している中で、都市における一番の課題は『持続可能性をどう身につけるか』だと思っています。その中で我々がまちづくりに関わっていくに3つの観点が必要です。ひとつは『ハードとソフトの整備の仕方』です。人口拡大に伴って都市が拡大している時代では何らかのモノをつくれば目的通りに使われる、つまりハードがソフトを伴っていました。しかし高齢化により人口減少が進む社会では、どのようにハードを使ってもらいたいかということから考えていかなくてはなりません。それと並行する話ですが、官主導のまちづくりから『民主導、あるいは官民連携』がこれまで以上に重要になってくる世界が訪れています。そして3つ目が『既存ストックの活用』です。現在、街にはストックが十分に整っているので、新たにつくるよりも今あるストックをどのように使い倒していくかという発想が必要になります。これらはいずれもエリアマネジメントにつながる考え方であり、この3つの観点を持ちながら我々も必要な支援をしていきたいと考えています」(宇野氏)

続いてプレゼンテーションへと移ります。まずはエリアマネジメント組織の実態把握及び発展に向けた基礎資料とすることを目的に、エリアマネジメント会員と一部法人会員計45団体を対象に実施したアンケート調査の報告です。このアンケートは、エリアマネジメント組織の形態やスタッフ構成、資金などの「組織の概要」、活動対象地域における課題や具体的なエリアマネジメント活動内容などの「活動概要」、持続可能な開発目標(SDGs)を意識した取り組み状況などの「SDGsとエリアマネジメント」という3つのセクションに分けて調査したもので、全国エリアマネジメントネットワーク事務局の長谷川隆三、並びに京都大学経営管理大学院特定教授の要藤正任氏より報告が行われました。

長谷川より報告したセクション1とセクション2においては、6割以上の団体が「住民やワーカー、企業同士のネットワークが弱い」という課題を感じていることや、コロナ禍の中で半数近くの団体が屋外空間活用への取り組みを実施したこと、また半数以上の団体が新型コロナの影響で収入が減少したことなどが報告されました。また要藤氏より報告いただいたセクション3に関しては、約4割の団体が「SDGsを意識し、それに沿った取り組みを実施している」こと、その中ではまちづくりに関する取り組みだけにとどまらず、中水を利用した打ち水イベント、干潟・海・河川に関するなど環境教育に関するものも多いことなどが報告されました。

次に、International Downtown Association(IDA)のPresident & CEOであるデーヴィッド・ダウニー氏による「COVID-19の時代における北米のエリアマネジメント」についてのプレゼンテーションが行われました。ダウニー氏らの調査研究では、北米の多くのビジネスパーソンがフルタイムでオフィスでの労働を避けたいと考えていること、それに伴ってハイブリッドワークモデルの働き方がなくなることはないという予測が報じられました。また、パンデミック下において屋外スペースの活用などを実施したBID組織に対する市民の信頼度が向上しているという意見が増えていることも紹介。そして今後エリアマネジメント業界が取っていく戦略として、(1)積極的に信頼できるリーダーの役割を果たすこと、(2)パブリックスペースの恒久的活用、(3)住民の少ない都心での活動レベルの向上、(4)社会的公正に基づいたリカバリー、(5)パンデミックは今後10年の都市変革の機会と認識すること、という5つが紹介されました。最後にダウニー氏は次のように述べてプレゼンテーションを締めくくりました。

「このパンデミックで、献身的なエリアマネジメントのプロフェッショナルの人たちの素晴らしい仕事を自覚しました。彼らは、自分たちの都心がパンデミック下を生き残るように努めつつ、その都心のさらなる発展と活性化を図るための新たなビジョンを作り出しています」

IDAのロバート・ダウニー氏

 


グリーンインフラとエリアマネジメントの相互連携への期待

東京農業大学地域環境科学部准教授の福岡孝則氏

 

続いて東京農業大学地域環境科学部准教授の福岡孝則氏より「グリーンインフラとエリマネへの期待」という題で、「リバブルシティ(住みやすい都市)」のあり方とグリーンインフラの可能性についてプレゼンテーションが行われました。

リバブルシティとは、経済成長や利便性だけでなく、その街で働き生活をする多世代の人々が、文化・社会、健康、環境など多様なライフスタイルを選択しながら快適に住み続けられることを重視する考え方で、コロナ禍で多くの人の生活スタイルに変化が生じたことも相まってこれまで以上に重要視されています。リバブルシティに関連して注目度が高まっているのが「グリーンインフラ」です。自然の力を通じて生物多様性や減災の実現、あるいは質の高いライフスタイルを演出するグリーンインフラとリバブルシティの関係性について、福岡氏は次のように整理してからプレゼンをスタートさせました。

「エリアマネジメントでは、エリア全体をどうオーガナイズするかも大事ですが、一つひとつの場所に介入してベストな選択をして都市を変えていくアクションも重要です。都市のビジョンやガイドライン、方向性など上位に位置するものに対して個別の場所がどう呼応していくのか、個々の場所と緑をどうつなげていくのか、そして緑の場所に介入していくことでそのエリアにどのような可能性が広がっていくかということは、エリアマネジメントに関わる方も興味があるのではないでしょうか」

エリアマネジメントとプレイスメイキングの概念図

 

こう述べた上で福岡氏は、プレイスメイキングとグリーンがクロスした5つの事例を紹介していきました。

(1)民間の敷地で展開するプレイスメイキング(東京都港区・コートヤードHIROO

旧厚生省の官舎、駐車場を一体的にフルリノベーションし、住宅・飲食など多用途の施設に再生させた事例。施設内には健康や食、アートを取り扱う事業者が入り、定期的に施設内のスペースを開放したイベントを開催。各イベントはディベロッパー自らが企画しており、「こうした小さくてクリエイティブなディベロッパーのあり方は今後問われてくるのでは」と福岡氏は説明しました。

(2)公園の社会実験からマチの戦略へ(兵庫県神戸市・東遊園地)

2014年に市民有志が既存の公園に芝生を敷き、カフェやアウトドアライブラリーなどを設置する「アーバンピクニック」という社会実験を実施したところ、翌年以降神戸市や多様な市民が関わり始めた事例。社会実験の結果、公園の再整備、主体組織の都市再生推進法人指定や、パビリオンの再活用などの展開が進みました。社会実験とシンクロするように、神戸市都心部でLiving Nature Kobeという自然を中心にした都市のビジョンづくりが進行中です。福岡氏は、小さな公園からスタートした活動に色々な市民が主体的に関わり、徐々に街全体に広がっていった点が特徴的と述べました。

(3)公民連携で公園のようなマチをつくる(東京都町田市・南町田グランベリーパーク)

公民連携で既存の公園や商業施設、さらには駅、道路の再編集・再整備という一体的なプロジェクト。隣り合っていながらも分断されていた公園と商業施設を、道路の再配置などによりオープンスペースを通じてつなげ「すべてが公園のような街」を作り上げていきました。商業施設にもふんだんに緑を配し、特に施設の屋上には多年草を植えることで1年中植物を楽しめる空間を創成。一方で公園については市民も含めたワークショップを開催して課題や問題を洗い出していった末、人々が自然に身体を動かしたくなるように「アクティブデザイン」の考えを取り入れて再整備を実施。商業施設、公園、また隣接するスヌーピーミュージアムやまちライブラリー等はそれぞれ別の組織がマネジメントしていますが、各組織を取りまとめる「みなみまちだをみんなのまちへ」という一般財団法人が官民連携で設立されている点も特徴です。

(4)BIZとグリーン・プレイスメイキング(アメリカ・デトロイト)

デトロイトの都市中心部の高速道路とデトロイト川に囲まれた140ブロック、約2.8平方kmをBusiness Improvement Zone(BIZ)に設定し、公開空地の改修やプレイスメイキングに取り組んでいる事例。この取り組みには550の民間企業が参加しており、各企業からの年間約4億円に上る会費収入の一部を活用しているといいます。デトロイトは自動車産業で有名な都市ですが、BIZを通じて都心部で戦略的に緑の場所を中心にした取り組みが展開されていることなども説明されました。

(5)エリマネとグリーンインフラ(イギリス・ロンドン)

ロンドンのヴィクトリア駅周辺におけるVictoria BIDによるグリーンインフラの取り組み事例。「清掃・緑化」「安全・治安」「持続可能な発展」「観光誘致」「公共空間」の5分野で活動を展開しています。同BIDは単に街に緑を設置するだけではなく、緑化のための潅水システムや水害抑制効果の試算などにも取り組んでいる点がポイントであり、中でもキングスクロスで展開されている化学薬品を一切使用していないスイミングプールは「自然と水と緑の関わりを通じて人間の奥底に触れるものとして重要になってくる気がする」と、福岡氏は述べました。

各事例を紹介した上で福岡氏は、グリーン×プレイスメイキングの取り組みを進める上で、(1)場所(グリーンプレイス)から始める、(2)時間と場所のマネジメント、(3)グリーンインフラに育てる、という3つがポイントになると説明しました。

「それぞれの場所だけで取り組むのではなく、公民、民と民、公と公など様々な形での連携が必要ですし、それをつなぐ中間支援組織のあり方も考えていくべきだと思っています。またランドスケープ空間は時間と共に変化していくものなので、それが媒介となって化学反応を起こす感覚も重要ですし、緑と既存のアセットを絡めながらマネジメントやキュレーションしていくことがディベロッパーには求められるでしょう。そして表層的な施設や植物だけを考えるのではなく、『読む(調査)』『書く・描く(計画・設計)』『動かす(施工)』『育てる(管理運営・マネジメント)』という4つを意識し、その場所をグリーンインフラに育てるという観点も非常に大切になります」

最後に次のような言葉で講演を締めくくりました。

「現在は公園や緑分野と街とでは管理者が異なる場合が多いですが、両者が相互に絡み合い、学び合いできるようになっていくともっと楽しいですし、街も変わってくるのではないかと考えています」

グリーンインフラに必要な4つのキーワード

 


エリアマネジメント側から緑の専門家に働きかけを

福岡氏のプレゼンを終えるとトークセッションへと移ります。トークセッションには福岡氏と事務局の長谷川に加え、全国エリアマネジメントネットワーク会長の小林重敬氏、Groove Designs代表の三谷繭子氏が参加。次のような質疑応答がなされました。

全国エリアマネジメントネットワーク会長の小林重敬氏

 

Groove Designs代表の三谷繭子氏

 

Q. 今後日本でのエリアマネジメントが緑を意識していく上で、クリエイティブな要素を入れることが鍵になると思っています。またカリフォルニアでは郊外に行って緑を楽しむのではなく、都心で緑を楽しむような風潮が出てきています。こうした点についてどのように考えていますか?(小林氏)

A. コロナの影響で都心に人が集まらなくなったことで、オフィスとは何か、人が都心で働く意味は何かということを考えました。オフィスやその周辺に緑が溢れる空間があることでできる役割もあると思っていますが、それが何なのかは今は簡単にはお答えできません。ただ、クリエイティブな人々が自分たちで参加したいと思って集う街になるにはそのような視点も必要な気がしています。また事例紹介で挙げたキングスクロスのプールのように、自然と人との新しい関係が作れる都市空間についても考えていく必要があると思っています。

ただ、民間企業が美しい公共空間をつくるのはいいのですが、一方で私の立場としては、どうやってそこに公共性を持たせるかという観点を持つことも大事にしています。ですから、民間と公共がお互いの力を引き出し合うことも頑張らなくてはいけないんじゃないかと感じています。(福岡氏)

Q. 神戸市のアーバンピクニックの事例では、グリーンプレイスを中心にクリエイティビティを創発し、色々な団体が協力し合い新しい活動が生まれていったということですが、その流れはどのように起こっていったのでしょうか。(三谷氏)

A. 東遊園地の場合、アーバンピクニックと同時にEAT LOCAL KOBEという地産地消を推進する社会実験も他主体によって同時に行われていました。同じ公園の中で2つの社会実験が生まれたように、神戸には様々な組織がありますので、それぞれの力の良さをどう引き出していくかが大事になります。

新たに再開発してできた地域の組織の場合は、企業の協力もあって人手も資金も安定していますが、そうではないローカルな場所でのエリアマネジメントがどう発展していくのか、どう地域に活きていくのかを見ていくことも勉強になると思っています。(福岡氏)

Q. 周囲の人々に緑の空間の必要性や価値を伝えていく上でのコツがあれば教えて下さい。(三谷氏)

A. 緑の重要性や、サステナブルな取り組みが大事だと訴えることで付いてきてくれる層もいます。しかしより多くの方に参加してもらうには、例えば緑×健康・スポーツというように異なる分野のものと掛け合わせることが有効になります。緑と何を組み合わせることで両者の価値を上げていくことができるかを考え、企画を立てていけるといいなと思っています。もちろんすべてをコントロールできるわけではありませんが、そこがランドスケープや屋外空間に携わる面白さでもあると思っています。

最後に福岡氏は次のようなコメントでディスカッションを締めくくりました。

「地域には、造園屋や庭師など、植物に詳しい方は実はたくさんいるのですが、そういった方々はエリアマネジメント側との接点があまりないんです。しかし地域によっては共に活動している例もありますので、エリアマネジメントの方々からも緑や植物の専門の方に声を掛け、誘ってもらえると、色々な可能性が開けると考えています」(福岡氏)


虎ノ門・麻布台エリアで進むグリーンコミュニティの実践事例

森ビル株式会社タウンマネジメント事業部パークマネジメント推進部の中裕樹氏

 

続いて、森ビル株式会社タウンマネジメント事業部パークマネジメント推進部の中裕樹氏より、「グリーンコミュニティの実践」というタイトルでプレゼンテーションが行われました。森ビルは、建物を高層化することによって活用できる空間を増やして公園や緑をつくり、人々に開放していく「Vertical Garden City」というコンセプトを掲げてまちづくりを展開している企業です。中氏は同社において虎ノ門ヒルズの運営や新虎通りのエリアマネジメントを担当しつつ、個人としても居住する港区の地域活動や他地域でのマルシェのボランティア、ゴミ拾いボランティアを行うNPO法人グリーンバードの活動など、公私に渡ってまちづくりに携わっています。こうした精力的な行動は「エリアマネジメントには『その街の圧倒的な当事者であること』が必要」という考えを持っているからだと中氏は説明しました。

森ビルのコンセプトである「Vertical Garden City」のイメージ図

 

そんな中氏は、現在進行系でグリーンコミュニティ構築を実践している事例として2023年竣工予定の「虎ノ門ヒルズプロジェクト」と「虎ノ門・麻布台プロジェクト」を取り上げました。前者は、虎ノ門ヒルズエリアの7.5ha、延床面積80万平方メートルの区域に、商業施設やホテル、新たなビジネスの創出拠点となるイノベーションセンターなどを備えるプロジェクトです。東京大学生産技術研究所(IIS)と英国王立美術大学院大学ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)が連携して開催する教育プログラムや、ビジネスタワー内に国内最大級のスタートアップ集積拠点CIC Tokyo、日本版イノベーション創出拠点ARCHといった施設を設けるなど、現時点でも様々な取り組みが展開されています。また後者は、虎ノ門から赤坂や六本木を含めた麻布台エリアの道路や公園などのインフラを整備し、防犯防災面における都市機能の更新を実現するもので、1989年のまちづくり協議会設立後、30年以上に渡って地元住民を含めて議論を重ねながら進めてきたものです。いずれも東京都港区という都心を舞台としたプロジェクトですが、「緑」が重要なキーとなっていると中氏は説明しました。

「従来の虎ノ門は実は人が集まりづらいところがありました。そこで虎ノ門ヒルズプロジェクトでは、4つの高層ビル(うち1つの(仮称)ステーションタワーは2023年竣工予定)を緑とデッキでつなげることでネットワークを構築し、各エリアを結びつけていきたいと思っています。各施設にはイノベーションやクリエイティブの拠点ができ始めているので、緑を通じて各要素をうまく噛み合わせていきたいです。さらには、虎ノ門ヒルズの南側にある愛宕神社や北側にある日比谷公園なども緑でつないでいくことで、虎ノ門ヒルズをこの地区の拠点にしていきたいと思っています」

「虎ノ門・麻布台プロジェクトは、『MODERN URBAN VILLAGE 緑に包まれ、人と人をつなぐ「広場」のような街』というコンセプトを掲げています。『GREEN』と『WELLNESS』を軸に、自然と調和した環境と人間らしく生きられるコミュニティをつくろうというものです。建物を高層化して足元を緑化するという基本的な考え方は同じですが、街の中心に緑の広場を置くことで、人の流れがシームレスになるランドスケープを計画していますし、建設予定の建物もすべて緑化していく予定なので、生活と緑が一体化した環境をつくろうとしています」

虎ノ門・麻布台プロジェクトは、実際に国内外の環境認証を取得した上で進められています。またWELLNESSの観点では医療施設を核として、フィットネスクラブやスパなどもつくられる予定であり、「健やかに過ごし、働きながら、様々なイベントを通じて新しいアイディアや楽しみが生まれる街」を目指しているそうです。そして中氏は、最後にこのプロジェクトの意義と今後の展望を次のように話して講演を締めくくりました。

「これまで森ビルは都市に緑をつくってきましたが、今回紹介した事例はその象徴的なプロジェクトになるはずです。森ビルの社長であった森稔は、緑を通じて虎ノ門や麻布台、さらにはより広い範囲をつなげるグランドデザインを描いていましたが、まさにそのようなイメージの大街区ができると考えています。今後も我々はこの地域のエリアマネジメントを通じて、どのような価値を付けられるか考えていくつもりです」

各エリアを緑でつなぐ虎ノ門ヒルズプロジェクトのイメージ

 

街やビルを緑化する虎ノ門・麻布台プロジェクトのイメージ

 


パークマネジメントとエリアマネジメントの連携が今後の鍵

中氏のプレゼンを終えると、小林氏、三谷氏、福岡氏、長谷川を交えたトークセッションに移ります。その冒頭、小林氏から緑とクリエイティブにどのような関係についてインプットがありました。

近年、エリアやコミュニティに存在する緑や自然が人間の創造性にどのように寄与するかという点に関しては科学的なアプローチがなされるようになっています。例えば日本医科大学医学部教授の李卿氏は『森林浴』(まむかいブックスギャラリー)の中で、森林浴は人間の免疫力を高めてメンタルを整えることや、人の創造性を高め、思考をポジティブな方向に変える力があることを科学的根拠と共に紹介しています。また千葉大学環境健康フィールド科学センター特任研究員の宮崎良文氏も『森林浴 Shinrin-Yoku』(創元社)の中で、ここ15年ほどの間に自然セラピーの生理的評価システムが確立されつつあり、新規データが提供されていることを紹介した上で、かつては自然を捨てた都市空間において自然を取り戻す重要性や、緑が街の価値を高めることに触れている点は「エリアマネジメントにつながる発想」と小林氏は説明します。

また、創造性を高めるという点では、緑が発する音などが人間の脳や身体に与える影響についての研究も進められていることも紹介。例えば脳科学者の大橋力氏は『音と文明—音の環境学ことはじめ』(岩波書店)で機能主義的な都市計画によって身近な空間から緑が引き離されてしまった時代において、如何にして植栽や昆虫を含む小動物などの自然生命系を生活空間に組み込み、人間の脳に刺激を与えるとされる「ハイパーソニック・エフェクト」を生み出せるかが喫緊の課題であると指摘しています。また慶應義塾大学環境情報学部教授の諏訪正樹氏は『身体が生み出すクリエイティブ』(ちくま新書)でクリエイティブ=身体知と定義した上で、森の中を散歩したり、街路樹がある空間を散歩したりすることで人の身体は刺激を受け、クリエイティビティを高められると考えていることに触れていきました。

「大丸有エリアでも、大阪駅周辺のうめきた2期開発においても、緑の空間を増やす試みが行われています。私もそれらに関わっていますが、こうした取り組みは、グリーンとクリエイティビティが深いところでつながっていると考えているからです」(小林氏)

次に、各参加者からのコメントもふまえて質疑応答がなされました。

Q. 森ビルは様々な形で緑を展開していますが、これはクリエイティブを生み出し、人材を育てることにつながると考えています。緑とクリエイティブの関係性について、森ビルとしてはどう考えているのでしょうか。(小林氏)

A. 今回紹介した虎ノ門・麻布台プロジェクトは各施設の真ん中に緑があるので、すべてが何らかの形で緑に関わってきます。エリアで働く人が新しいビジネスを起こしたとするとそのベースには緑がありますから、その意味で緑がクリエイティブにつながっていくと考えています。(中氏)

Q. 中さんは現在「パークマネジメント推進部」に属しているとお聞きします。今回ご紹介いただいたプロジェクトは単なるタウンマネジメントではないので、パークマネジメントという名前の部署が動いていることは非常に重要なことだと思っています。パークマネジメントに携わる人とエリアマネジメントに携わる人はそれぞれ異なるスキルセットがあるのでいい形で連携できるとお互いにいい影響が出てくると思っていますが、現実にはまだまだうまく連携できていませんし、そのための中間支援組織が少ないとも感じています。こうした点についてどのように考えていますか。(福岡氏)

A. 立ち上げ当初は右も左も分からないような状態でしたが、カーボンニュートラル宣言を始め社会情勢が大きく変わっている中で、とても重要な仕事に関われていると思っています。これまで見えていなかったものを緑という軸を通すことで見えるようにしたり、違った見方を生み出したりできていますし、緑を通じて色々な企業や人がつながっていくことで、前向きな取り組みがさらに増えていくとも感じています。実際にやっていることはいわゆるパークマネジメントという言葉とは少し違うかもしれませんが、都市ならではでできることを実現したいですし、現在取り組んでいるプロジェクトを通じて、2023年までに実現していくつもりです。ただ、やはり難しい部分はたくさんありますので、植物と向き合ってきた方々とどうつなぎ合わせていくかは重要です。そうやって、今まさにグリーンコミュニティを実践している状況です。(中氏)

Q. エリアマネジメントにおいては緑があることの価値を利用者にいかに感じてもらうかが重要です。エリアとしてサステナビリティ向上に取り組む意義や認知を広げるためのアプローチをどうお考えでしょうか。(三谷氏)

A.森ビルが運営する各ヒルズを中心にコロナ禍において感染症対策のために様々なルールを作りましたが、関係者一人ひとりが自分ごととして捉えることで自然と浸透していきました。そういったことができるのであれば、緑に関しても落ち葉を清掃しよう、植栽を整えようといったことができるのではないかと感じました。人々の意識を高める取り組みは、今後街を作っていく上で必要だと思いますし、街を一体的に運営していく立場だからこそできることもあると感じています。例えばデジタルアプリの活用などは有効だと考えていますが、実際にどのように仕組み化するかは悩んでいるところでもあります。(中氏)

質疑応答を終えると、福岡氏からグリーンインフラとエリアマネジメントに対する期待のメッセージが送られました。

「何度か触れさせていただきましたが、パークマネジメント側とエリアマネジメント側がどれだけ力を合わせられるかが重要だと思いますし、そこにはもちろん行政の協力も必要です。そのためのシナリオやネットワークのつくり方は無限にあるはずです。そのような関係性ができれば、気候変動やサステナビリティに関する課題にも向き合っていけるでしょう。そのためにも、今回のシンポジウムのような形で色々な組織や人が刺激を与え合う機会をもっと設けていければと思っています」(福岡氏)

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