【開催レポート】プレイスメイキング講座2025_前編

2025年6月20日『プレイスメイキング講座2025』を開催しました。

全国エリマネでは、エリアマネジメントに従事する実務者の育成、能力向上を目的に、エリアマネジメントに係わるいくつかのテーマを設定し、実務者同士のディスカッションやケーススタディを行う研修事業を2022年から実施しています。

実践的なエリアマネジメントについて学ぶこの「プレイスメイキング講座」は、「パブリックライフ」を切り口に、公共空間を人々の居場所として魅力的かつ安全に活用・運営する方法を考えることを目的としています。 場の観察や分析からデザインの視点まで、エリアマネジメントのさまざまな実務におけるヒントを参加者とともに深め合った本講座。 この場で共有された知見やアイデアの一部をレポートします。

イントロダクション

本講座は、全国エリアマネジメントネットワークが組織するワーキンググループによって企画されました。
メンバーは有限会社ハートビートプランの園田聡氏、MEMENTの上田孝明氏、O + Architecture ltd.の鈴木美央氏の3名。
講座も3名による主導のもと行われました。

はじめに、園田氏からイントロダクションがあり、本講座にあたって前提の共有がなされました。

「まず、普段皆さんが取り組んでいる『エリアマネジメント』とは何でしょうか。言葉を区切って見ていくと、『エリア』とは、買い物や読書をしたり、休んだりできる『プレイス』と呼ぶような小さな場の集合体と捉えることができます。そうした小さなプレイスの集合をマネジメントすることが『エリアマネジメント』である、ということを共通認識として持っておきたいと思います。
その上で、今回のプレイスメイキング講座ではマネジメントや組織論といった話の前に、我々が向き合う『プレイス』について理解を深めることを目的としています。そもそもどういう場が豊かと言えるのか、エリアの価値向上に繋がる空間とはどういったものか、皆さんの視点も共有いただきながら、考えていきましょう」

小さな場について考える「プレイスメイキング」は、言わばやがてエリアマネジメントへ広がっていく種です。そして園田氏は、そうしたプレイスメイキングには3つのポイントがあると続けます。

 

Point1. 活動と空間の適切なマッチング

プレイスメイキングの出発点は、どんな人が、どんな時に、どんな気持ちでその場にいるのか、そしてそれはどのように生み出されているのかを捉えることです。そうした背景をうまく捉えられないままでは、エリアにどういった空間やサービスが必要か判断がつかず、迷走したプロジェクトになりかねません。
その場に生まれている豊かなシーンには必ず理由があり、活動と空間がマッチするように要素のバランスを取ることが重要になります。

 

Point2. プロセスのデザインが最も大切

公共空間は地権者、行政、企業、テナント、地域住民など、多様な人が関わる場であり、その中で体制や進行フローをどのように設定するかは非常に重要です。チーム内で利用者像が共有されていない、建築設計と運営方針が一貫して検討されていないなど、よく聞かれる課題の多くは、プロセス設計が曖昧であることに大きく起因します。誰と何を議論すべきか、どの範囲までの合意を得るべきか、意見をどういったステップでアウトプットに落とし込むか。そうした一つひとつの積み重ねが最終的な場にも影響するため、目標達成に向けた適切なプロセス設計が要になると言います。

 

Point3. The Power of 10

これらのポイントを踏まえた上で、具体的にどういったプレイスを目指すべきでしょうか。
本講座では、いいプレイスとは10以上のアクティビティが共存しており、それぞれの人にとって意味がある場所と捉えます。ここで指すアクティビティとは、「偶然知人と出会う」「勉強や読書をする」「食事を楽しむ」といった活動です。単一機能の場所ばかりでは空間として効率が悪く、人々の関係性も生まれづらくなりますが、複数のアクティビティが共存し、さまざまな人によって使い続けられる状態であると、豊かな印象のある場になります。
この豊かさこそが鍵であり、本講義のテーマである「パブリックライフ」を読み解くことに繋がっていきます。

 

パブリックライフをどう捉えるか

プレイスメイキングのポイントを踏まえ、早速「パブリックライフ」の分析に取り組んでいきます。
分析にあたって、パブリックライフがある場所には「必要/任意/社会活動」が生まれていると園田氏は説明します。

「通勤や買い物などの義務的な活動を指す『必要活動』はどんな街にも発生しますが、そこに散歩やレクリエーションなどそうしたい気持ちから行われる『任意活動』や、挨拶や会話、コミュニティ活動といった他者と関わる『社会活動』が生まれる受け皿になっていることが、パブリックライフのある場所です。それは行政が持つ公共空間に限らず、カフェや民間施設においても持ちうるもので、その空間に応じてあらゆる活動の共存を考えていくことがパブリックライフの実現の一歩になります」

こうした活動が複合的に共存していることがパブリックライフであり、それを実現することがすなわちプレイスメイキングに繋がります。

続いて、パブリックライフを捉える際の視点が共有されました。
全国各地のすぐれた公共空間を評価する「まちなか広場賞」というアワードで定められた審査基準を参考に、「広場の日常的な豊かなシーン」「豊かなシーンを生み出すための要素」「豊かなシーンがあり続けるための仕組み」「豊かなシーンの担い手となる人・組織」の4つのレイヤーで捉えることで、場の構成を理解できると説明します。

「自分が豊かさを感じるシーンを起点に、そうした状況を生み出す要素には何があるのか、その要素を提供するにはどんな仕組みがあるのか、その仕組みが導入できた背景にはどういった人や組織体制があったのか、それらを因数分解して読み解いていくことで、場の理解を深めることができます。
こうした分析ができるようになると、理想的な場所と自分が関わる場所の比較もしやすくなり、足りない要素が明確に見えてくるんです。そうした不足を明らかにし、補うような取り組みを実行することで、理想的なシーンの再現に繋げていくことができます」

 

鼎談|パブリックライフを分析し、理解を深める

プレイスメイキングとパブリックライフへのインプットを深めた後は、講師陣と参加者それぞれが事前に分析したパブリックライフの発表が行われました。
その内容は、豊かに感じたパブリックライフの写真を各自撮影し、なぜそう感じたのかを分析するというもの。自身が担当するエリアや話題のスポット、普段何気なく通りがかる場所などを選び、それぞれ分析します。参加者によって多様な視点があることはもちろん、普段の実務経験を活かした深い推察がなされ、それぞれのエリアで活動する参加者の知見も自然に共有されていきます。

ひと通り発表が行われた後はその内容を受けて、さらにパブリックライフについて思考を深めるための議論が展開されました。

鈴木 今回の宿題では3箇所の場所を挙げて分析してもらいましたが、最低でも3つ分析すると自分の視点が研ぎ澄まされます。普段皆さんは組織の一員としてエリマネに取り組まれていますが、属人的な視点も大事だと思うんです。さまざまな人と関わるからこそ、この人だからこういう意見を言うんだという姿勢は武器になるので、どんどん出していってほしいですね。

園田 それに関連して言うと、我々のように専門的にまちづくりに関わる人だけがこうしたことを学び、仕事として取り組み、利益を生むという構造によってできた空間ばかりになってもエリアとして面白くならないんじゃないか、というジレンマがあります。
(参加者に向けて質問)先程の発表で福岡の中洲の屋台を挙げて「嘘っぽくない空間だと感じた」と表現されていましたが、そこにヒントがある気がしています。どういった部分が嘘っぽくなく感じたのでしょうか?

参加者 中洲の屋台はとても自然発生的というか、その場がある必然性を感じたんです。私はこれまで商業施設で働いてきて、集客のために奇抜な取り組みをしてきましたが、継続させることの難しさを感じていました。それに対して、中洲の屋台は長い歴史がありひとつの風景になっている。そこに必然性というものがキーになるように思いました。

鈴木 必然性にまでたどり着くには、誰かが変えようと思っても変えることができないような文化にしないといけないと思います。それには時間が必要で、そこをどう設計するかが私たちの役割になるかもしれませんね。プロジェクトの時間軸を考える際、通常ではフェーズごとに計画的に区切りますが、とりあえず漠然と時間だけ見込んでおくといいんじゃないでしょうか。フェーズを固めすぎてもその通りに進むことはそうありませんし、ある程度泳がせながら起きることを見守るような時間の考え方も必要だと思います。

上田 文化というキーワードは、先程のレクチャーにあった場所を読み解く4つのレイヤーにも紐づけることができそうですね。一番下のレイヤーのさらに下に、その場所に元々あった文脈を読み解くことも大事です。いい場所には必ず文化があり、文化の影響を受けて人が活動しているように思います。

園田 時間軸の話で言うと、僕がかつて実証実験として携わっていた仮設の広場があるのですが、4年ほど実証した後いまはもうなくなっています。ただ、4年という限られた期間でも若い人や子供たちにとっては、変化の大きい青春期間をそこで過ごしたという記憶が定着するんですね。そうした記憶があると、街に出て広場に行くことが当たり前っていう習慣になる。それはひとつの文化と捉えることができるし、それこそ嘘っぽくないことですよね。
日本にはヨーロッパのように広場の文化がないと言われることがありますが、日本だって今から取り組むことで文化になりうることができるはずです。そういう意味でも、一定の時間を見ていくことはとても価値があると思います。

鈴木 あとは、偶発的に何かが起こることが当たり前のようになると、本当の豊かさに繋がるんじゃないかと思います。完璧にしようとしすぎないことが大事で、隙がないと人は関わってくれません。完璧はむしろ罪と思った方がいいと思うんです。

上田 ブリコラージュの感覚に近いですね。場の使い方を固めすぎず、もしかするとこんなこともできるかもしれないというような姿勢を持っておくと、訪れる人も柔軟に考えられる場にすることができると思います。

園田 完璧は罪というのはその通りですね。完璧にしすぎてしまうと訪れる人が消費者にしかならず、提供者と消費者の関係にとどまってしまう。来訪者にもこういうことがしたいという欲求が必ずあるので、余白を持たせることが大事だと思います。組織的には完璧でないものを通すことは難しいと思うのですが、余白と不備の違いをしっかり捉えてデザインできるといいですよね。

鈴木 そういった点で私が大事にしていることがあって、フライヤーなどを作る際には基本的にはプロのデザイナーではなく、副業的にやられている方や地域に住む絵が得意な方にお願いしています。それは、自分も関われそうと思える機会をつくるための戦略で、そうした積み重ねが余白になっていくじゃないかと思います。
一番大事なことは、何も考えないでやってはいけないということかもしれませんね。フライヤーを誰に頼むかにしても、ワークショップを何曜日の何時に実施するかにしても、相手を消費者にしないためにはどう工夫できるかを、すべての要素に対して考えることが必要だと思います。

園田 普段企画をするときに意識しているのは、広場や公園や道路を借りる際に、全面貸切にはせず一画だけを使うようにしています。普段通りに過ごしている人がいて、その一方でいつもと違うことが起こり始めると、境界がわからなくなるんです。企画がその場全体を支配しないことが重要で、そうすると自然と溶け込むような形になり、不確実性みたいなものも入ってくるように思います。
この場でどういったことが起こるといいかを考えて、それを仕掛けることはもちろん重要ですが、想定外のことが起こった時にそれをしっかり受け入れられる寛容性を運営側が持っておくことも大事な余白と言えますね。

 

参加者の意見交換と共有

白熱する議論に刺激されたところで、参加者同士で意見交換へ。怒涛のインプットによってそれぞれの頭に渦巻いている考えを言語化して吐き出し、また違う意見を取り入れることで、さらに考えを深めることに繋げていきます。
少しの休憩を挟み、続く後半ではパブリックライフの組み立てを行っていきました。

 

▷▷▷【開催レポート】プレイスメイキング講座2025_後編 に続きます。

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