【開催レポート】全国エリアマネジメントシンポジウム2024 『〜エリアマネジメントの意味を考える〜』その3

2024年8月30日、エリアマネジメントシンポジウム2024を虎ノ門ヒルズステーションタワーにて開催しました。今回のテーマは「エリアマネジメントの意味を考える」。エリアマネジメントと呼ばれる活動や事業が生まれて20年が経過した今、改めてエリマネを見つめ直す議論を二部構成にて行いました。
多様な立場や地域でエリマネに取り組む方々に登壇いただき、課題や悩みを共有しながら「これからのエリアマネジメント」のヒントに溢れた【開催レポート_その3】です。

▷▷▷【開催レポート 全国エリアマネジメントシンポジウム2024_その1】はこちら。

▷▷▷【開催レポート 全国エリアマネジメントシンポジウム2024_その2】はこちら。

 

SESSION2:エリアマネジメントに係わる私たち 
                    〜エリアマネジメントに携わる若手メンバーと中堅メンバーの対話によって〜

続いてのセッションでは、エリマネに携わる若手メンバーと中堅メンバーの対話によってエリマネそして、それに係わる人々について考えていきました。全国エリアマネジメントネットワークの若手実務者会議「AMU35」のメンバーから、日々の取り組みの中で感じる課題や悩みを投げかけ、中堅メンバーがメンターとしてそれに答える形で対話をしていきます。

<登壇者>

【メンター】
内川亜紀氏|札幌駅前通まちづくり株式会社 代表取締役
園田聡氏|有限会社ハートビートプラン 代表取締役(共同)

【AMU35メンバー】
金井れもん氏|(公財)中国地域創造研究センター/広島駅周辺地区まちづくり協議会
川島あさひ氏|東京建物株式会社
高山円香氏|三菱地所株式会社/大丸有エリアマネジメント協会
浅野進氏|安田不動産株式会社

【モデレーター(AMU35発起人)】
山中佑太氏|NTTアーバンソリューションズ株式会社
内野洋介氏|(一社)二子玉川エリアマネジメンツ/東急株式会社

 

AMU35メンバー
(左上:川島あさひ氏 / 右上:浅野進氏 / 左下:金井れもん氏 / 右下:高山円香氏)

 

Q.現場対応や関係者調整など目の前の業務に追われ、エリマネの上流にあるビジョンと現場の取り組みとの距離を感じながらも、丁寧に振り返る時間がありません。また、アウトプットの機会が少なく、若手の頃はどういった行動をして視野を広げればよいでしょうか?

内川 若手ではなくなった今でも目の前の業務に追われていますが、私の場合は少し割り切っていて、イベントなどの現場業務は一番自分たちが考えていることを表現する場だと捉えています。イベントは「手段」なので、手段とビジョンがなるべく近づくように心がけていますね。振り返りも、資料をまとめて関係者を集めてしっかり時間を取ろうとすると大変ですが、実は雑談の中で振り返っていることが結構多いので、そういったことでも大切にするようにしています。
若手の頃の情報収集については、全国エリマネの事務局の方と仲良くなって、とにかくなんでも話を聞いてました(笑) 私の頃はエリマネ女子会という活動があったので、そこで他のエリマネ団体の先輩方と仲良くしていただいて、皆さんの話の中から課題の糸口を見つけるようにしていましたね。今でも様々なプログラムがあるのでそういった場に参加するといいかもしれません。

メンターの内川亜紀氏

 

園田 私はコンサルの立場なので、ビジョンと実際の取り組みがいかに結びついているかを言語化することが大きな役割ですが、若い頃は言語化しようにもスキルも経験も乏しかったので、現場にいる方の話をたくさん聞いて、その想いを自分なりに言語化するようにしていました。中でも一番よく聞きに行っていたのは飲食店の方の話。飲食店は、地域の経営者の中でも非常に高いリスクを背負っていて、自分の業態や出店理由にしっかりロジックを持ってらっしゃるので、街の声として非常に学ぶことが多いんです。
そういう方々がどういうビジョンやポリシーを持っているのか、自分たちが実施したイベントは何か寄与できていたのか、別の席で食べているお客さんが関心を持ってもらえる内容になってたかなんかを考えて。正しいかどうかはわかりませんし、お店のことは自分で調べてこいと怒られることもありましたが(笑) でも自分たちの視野も広くなりますし、すごくしっくりくるお話が多かったと思いますね。

 

Q.エリマネの取り組みはKPI設定や効果測定が難しく、どういった指標で測るべきか悩んでいます。また、エリマネの一環として行っている清掃活動には多くの方が参加してくださる一方で、そこからの展開に繋げられない状態が続いています。ステークホルダーが非常に多い中で、新しい取り組みに巻き込んでいくにはどうしたらよいでしょうか。

園田 コンサルの立場で言うと、自分が好きで素敵だと思うことに取り組めばいいと思います。コンサルという存在は当事者の方からすると、お金もらってあるべき論を言っているだけと思われがちで、なかなか話を聞いてもらえないんです。なので、地域のこの人が言っていること、考えていることの中で、自分が心から素晴らしいと思えるものに対して、どうやったら実現できるか考えるようにしています。
地域には多くの企業がいるので一社一社すべてが合意して、全員がメリットが感じられることをやるというのはそもそも無理があるんです。それだったら、明確にやりたいことがある一社に絞って、今回はこの企業のテーマで皆さんでできることをやってみませんかと動くようにしています。この時に、お金を募るだけではなく、それぞれが持っている本業のリソースを共有してほしいとお話しすることも大事です。デザイン系の会社だったら制作物を協力してもらえないかとか、学校があれば学生に関わってもらうことができないかとか。一社ではできないことも、地域全体で力を合わせることでこんなことまでできるんだとわかってもらえれば、次に繋がっていくんですよね。
各社がどういったことにメリットを感じているかは、僕らではわからないことがたくさんあるので、話を聞いて何を求められているのかちゃんと理解して蓄積していくと、新しい活動に活かせるようになると思います。

メンターの園田聡氏

 

内川 清掃活動は参加してくれるだけで嬉しいと思った方がきっといいですよね。仲間がこれだけいるんだとお互いに知ることができますし、顔がわかるだけでも何かに繋がるんじゃないかと考えています。
KPIは誰もが難しいと感じていることかもしれませんが、私たちの場合は常にビジョンやミッションと照らし合わせて活動がちゃんとそれに伴っているかを確認しています。

園田 KPIや効果については、一つの取り組みを見た時に、どう多面的な価値を見出せるかといった見方をすることが大事だと思いますね。
例えば、ある街の駅前に中高生が多く集まる広場をつくった際に、周辺のステークホルダーの方にこの場所にどういった価値を感じるかヒアリングしたんです。その中で20代向けのショッピングセンターのテナントさんが、「広場に集まる中高生は、今はうちで買い物はしないけれど、3〜4年すればメインターゲット層になるので、この場所に親しみを持ってくれれば今後お客さんになってくれるかもしれない」という話をされて、そういう考え方もあるのかと思ったんです。つまり、店舗の経営判断として直近の顧客獲得に繋がらないことには投資できないけれど、公共なら将来的な人の流れを想像して投資できる。街で過ごす習慣をエリマネ側でつくっていくことは、ある種数年後に対する顧客創造の投資にも繋がるので、新しいマーケットをつくるという説明もできるんです。そうやって、絶対的な正解というよりあらゆる見方で価値を見つけていくことが大事だと思いますね。

内川 ヒアリングに行くと、事務局の言ってることって難しくてわかんないのよと言われることが結構ありますよね。やっぱり人それぞれの理解の度合いは異なるので、自分たちがやりたいこともあるけれど、相手の目線で話を聞くということはずっと大切にしていることかもしれません。

 

Q.エリマネは板挟みになる苦しみや収益性の悩みなど、逆風も多く負けそうになる時もあり、日々のモチベーションに波が生じます。そういった時はどうしていますか?

園田 僕の場合は最初の質問にもあった、その街の飲食店に話を聞きに行きますね。エリマネはステークホルダーが多く、それぞれのメリットになっているのか収益性があるのかといった話によくなるんですけど、「誰のメリットにもなってないことをやってる」と思ってしまうと、そもそも仕事として意味があるのかというところまで考えてしまいます。そういった時に、自分たちの活動を最初に手を挙げて一緒にやってくれた人を思い出して会いに行くんです。自分たちがやってることをわかってくれている存在は安心しますし、街の人の顔を見ることで、誰のためにやっているのかを再確認していますね。

エリマネの取り組みはそれぞれの地域で異なりますが、志を同じくする立場の悩みは共通するもの。現場に立つ実務者同士、具体的なアドバイスは若手メンバーにとっても多くのヒントとなったようです。
対話の後には、メンターのお二人から若手メンバーに向けてコメントをいただきました。

「今エリマネに取り組まれてる方の中でも、『エリマネ』という言葉をあまり知らずに、会社に配属されて関わるようになった方は多いと思います。ですが、私も全く知らないところからここまでやって来ているので、すごく専門性が必要なのかというとそれだけではありません。皆さん立場も違いますし、やっていることも全員バラバラなので、違いを楽しみながら業務に携われたらいいんじゃないかなと思っています」(内川氏)

「先輩方の研究や取り組みによって日本なりのロジックや手法が整理され、その功績の上に僕らはエリマネ活動をすることができています。一方で、これからのことは今の現場に一番ヒントや可能性があると思っていて、新しいことに取り組むと今までのロジックでは解けない課題が出てきますが、それが解けた時にまた次のステージに進めると思うんです。そういう意味では、僕らは先輩たちがやってきたことに貢献しながらさらに発展できるよう、今日のように現場で感じていることを共有し、研究し、何か形に定着させていかなければなりません。世代ごとで積み重ねていくことを大事にしながら、自らも新しいフィールドに行けるようにどんどん現場で活躍してほしいなと思います」(園田氏)

最後に、本会会長である出口敦氏から閉会の挨拶がありました。

「今日の一番のキーワードは『悩む』だと思っていまして、各セッションの中でも非常によく出てきた言葉ですが、やはり皆さんで悩む場がこの全国エリアマネジメントネットワークであり、悩みを議論する中から答えを導き出そうとすることがこの組織の一つのあり方だと思っています。時代と共に悩みが尽きることはないと思いますが、今後も活発な活動を通じて、日本のエリマネを広めていきたいと思っています」(出口氏)

全国エリアマネジメントネットワーク会長 出口敦氏

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