2024年8月30日、全国エリアマネジメントネットワークの第8期の活動振り返りと、第9期の活動方針を発表する総会を開催しました。今回は虎ノ門ヒルズステーションタワー45階の会場にて、東京の街を望みながら多くの会員の皆さまにご参加いただきました。報告がなされた主な内容をレポートします。
第8期事業報告
まず、第8期の主な活動と現在の状況について報告を行いました。
総括としては「研究会合同シンポジウムの初開催」、「エリアマネジメント研究交流会の認知向上」、「人材育成プログラムの展開」が主な活動となりました。それぞれの詳細は以下の通りです。
●活動の総括
(1)研究会合同シンポジウムの初開催
これまで「スマートシティ・DX」「グリーン×エリアマネジメント」「ナイトタイムエコノミー」をテーマとした三つの研究会を設立し個々に議論を進めてきましたが、第8期では各議論の成果として「全国エリマネ研究会合同シンポジウム:エリアマネジメントの役割・領域の拡張」を開催。各研究テーマの可能性やエリマネして取り組む意義を紹介しながら、三つのテーマを掛け合わせた都市の価値向上を図る新たな展開について議論を深めました。
(2)エリアマネジメント研究交流会の認知向上
第4回目の開催となったエリアマネジメント研究交流会は、15本の研究発表が集まり、100名以上の方に参加いただきました。本研究交流会で報告をすることを一つの目標とする学生も増えてきており、エリマネに関する研究や調査の報告の場として着実に認知度が向上しています。
(3)人材育成プログラムの展開
人材育成を目的としたプログラムでは、エリマネ実務者向け研修プログラム「プレイスメイキング講座」に加え、包括的にエリマネにおけるマインドを理解する新たなプログラムとして「エリマネマインド養成講座」のパイロット版を実施。エリマネに必要とされるリーダーシップや地域とのコミュニケーション、コーディネート力等を学ぶことを目的に、経験豊富なエリマネ実践者をメンターに迎え、インプットとディスカッションを行いました。今回のパイロット版にてニーズや運営の課題を明らかにした上で、第9期では本格的な開催を検討しています。
また、第5期に立ち上げた若手ネットワーク「AMU35」も継続的に開催し、人材の循環も行われています。
また、海外連携については、海外の組織と具体的な議論を進め、連携体制のベースを構築しました。一方で、当初計画していたアンケート等のリサーチ関係やエリマネウェビナー、行政との対話の機会の実施は着手に至らなかったため、第9期に引き継ぐこととしました。
第9期事業計画
続いて、第9期の事業計画の報告を行いました。これまでの全国エリアマネジメントネットワークでは、「交わる/深める/広める/支える」の4つの方針にて取り組んできましたが、活動の裾野が広がってきたことを踏まえ、第9期からは「高める」を方針に新たに追加。エリマネのプロフェッショナルとしての専門性・実務能力向上の機会を創出することにも注力していきます。
●第9期の主な活動内容
第9期では「エリアマネジメントの振り返りと高め合い」をコンセプトとして、以下の活動を計画しています。
➢ エリアマネジメントの振り返りとこれからの役割の再考と発信
➢ 中間支援組織としての情報蓄積及びエリマネに関わる人・団体の高め合い
➢ エリアマネジメントに関する行政との対話の充実
➢ 研究会・コミュニティ活動の推進を通じたエリアマネジメントの実務者育成
➢ 海外情報の収集やアジア都市との連携活動の展開(エリアマネジメントの海外への展開)
➢ 全国エリアマネジメントネットワークの組織体制の検討
これらを方針とし、特に注力したい事業内容について説明を行いました。
(1)情報交換・連携【交わる】
従来のニュースレターの発行に加えて、会員間で日常的に交流や情報交換ができるよう、オンライン等のコミュニケーションツールを活用した環境設備について議論を進めていきます。
また、海外連携では、IDA(International Downtown Association)等の海外ネットワークを通じて、世界各地のBID(Business Improvement District)の情報を蓄積し、情報交換を行っていきます。
(2)エリアマネジメントの社会的な認知向上【広める】
エリマネの社会的な認知向上に向けて、「エリマネを振り返る」ことをテーマにした大規模なシンポジウムを予定しています。また、イベントレポートの配信やウェブサイトの英語対応等を行い、さらなる広報の充実化を図ります。
(3)エリアマネジメント活動の深化・行政との対話・連携の場の構築【深める】
「エリアマネジメント研究交流会」を継続して開催するとともに、「エリアマネジメント政策対話」という新たな議論の場を展開します。これは、国土交通省とともに開催してきた「官民連携まちづくりDay」から発展した取り組みとして、エリマネの推進に必要な政策・制度の活用法や課題について、国、自治体、エリマネ団体といった多様な立場の実務者同士が対話できる機会を創出していきます。
(4)エリアマネジメントに関する各種情報提供やエリアマネジメント団体の強化【支える】
エリマネに関するこれまでのリサーチの成果として、「エリアマネジメント」という言葉が日本で提唱されてから現在までの約20年の動きを俯瞰して整理し、これまでのエリマネの役割や活動領域の広がりを理解するとともに、今後の展望を議論する場を展開する予定です。
(5)エリアマネジメントのプロフェッショナルとしての専門性・実務能力向上の機会【高める】
これまで開催してきた講習会での実践・試行をもとに、エリマネについて様々な観点から学ぶことができる場として「エリマネカレッジ」を開催します。プログラム内容は、第8期にパイロット版を実施した「エリマネマインド養成講座」やエリマネの制度や事例を体系的に学ぶ「エリマネ実務者研修講座」、合宿形式でエリマネのプランニングや事業設計を学ぶ「エリマネ実務者合宿」などを検討しています。
また、第9期から新たに「エリマネアワード」を立ち上げ、各エリマネ団体が行っているエリマネ事業を募集し、実務者同士で評価し合い、高め合う場を展開していきます。
最後に、全国エリアマネジメントネットワークの立ち上げから活動を牽引してくださった小林重敬氏が、第8期をもって会長を退任されることとなりました。退任の挨拶として、エリマネの可能性について次のように期待を寄せました。
「全国エリアマネジメントネットワークは約10年前に発足し、その中で様々な成果が上がってきたと思います。一つは、全国でエリマネ活動をしている団体が増えたこと。大都市を中心とした団体から、いまもっとも活動が活発化している中都市、それから最近では地方の小さな都市でも活動があり、あらゆる地域でエリマネ活動が展開できることがわかってきました。また、これまでは商業地域での活動が多くを占めていましたが、最近では住宅地でのエリマネ活動が徐々に芽生えています。
全国でのエリマネ活動は、非常に幅広く展開している過程にありますので、今後も皆さんで力を合わせてより一層ネットワークを広げていただきたいと思います」(小林氏)
後任には東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授の出口敦氏が就き、「新しい時代を築いていくための課題は多くありますが、そうした課題にも前向きにチャレンジしていきたいと思っています」とこれからの活動に向けた想いを述べました。
第8期の全国エリアマネジメントネットワークでは、研究会合同シンポジウムや人材育成プログラムの展開など、これまで積み上げてきた知見やノウハウをさらに実務面に生かすための展開を行いました。
会員も年々多くの方にご入会いただき、益々全国でのエリマネ活動の発展が期待されます。各地域での取り組みがより推進されるように、全国エリアマネジメントネットワークでは繋がりをより強固なものへとしていきます。体制が変わり新たなスタートを切る全国エリアマネジメントネットワークの活動に、これからもぜひご期待ください。
☞総会資料はこちらからダウンロードできます。
全国エリマネ第9回通常総会資料